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けれど。
受け取ったハサミで迷わず瑞稀くんが切ったのは、


ボタンを縫い付けていた糸だった。




さらさらと、瑞稀くんの手から離された髪がこぼれおちて、私に返ってくる。

瑞稀くんはそれを見ていた。




『え…何で…髪じゃ…』
「無理」
ちょっと嫌そうな、でも恥ずかしそうな顔をして、ボタンをコートのポケットにしまう。

瑞稀くんはまた、ゆっくり私を見た。




「好きな子の髪、切れる訳ない」




白い息の向こうに見えるその表情は照れた時の癖なのかもしれない。
また嫌そうな顔をして、そう言った。




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作者名：冷麦 | 作成日時：2019年12月21日 1時

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