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電車で会える夜を心待ちにした日々はあっという間に過ぎて、寒い冬が訪れた。
今年も終わる。街をゆくひとは何かに追い立てられるように先を急いでる。
クリスマスを待ちわびて街を輝かすきらきらの宝石みたいな電球すら、楽しそうだけれど
駅に冴え冴えと白く眩しいイルミネーションが点灯したばかりの夜だった。
いちどだけ、手がふれ合った。
いつも足もとが揺れて皆バランスを崩す、上でパンタグラフが火花を散らしていそうな急カーブのポイント。
『きゃ…』
「わ、大丈夫⁈」
隣り合って立っていた瑞稀くんによろけてしまって、偶然ふれた。
コートからは爽やかで優しい香りがした。
ほんの一瞬だけ驚いた目を見た気がする。
『ごめんなさいっ!』
そのあとはもう顔も上げられなくて、いたたまれなくて。
ぽっかり空いた座席。ちょうど乗ってきたおばあちゃんに席を譲ってそこから逃げた。
チャンスだった、はず。
はずなのに。
驚くほど話せなかった。
ふれた手はいつまでも熱くて、
ほんのすこしだけ嬉しくてくすぐったいけれど、
瑞稀くんにどう思われたかこわくて、
消え入りたいほど恥ずかしかった。
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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年12月21日 1時