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いつだったろう、
帰りの電車で一緒になるあのひとを好きになったのは。
電車以外には何の関わりもないけれど、駅の入り口の桜が散る頃にはもう好きだった。
舗道に敷き詰められた淡い色の花びらを踏む時、胸はぎゅっと甘かった。
そう覚えてる。
友達といる時の楽しそうに輝く大きなきらきらの目に見つめられたかった。
ひとりでいる時の眠そうで投げやりなのに鋭い目に
あの唇からどんな言葉が出てくるのって想像してはどきどきしてた。
いつも見ていた。
吊り革を持つ手から、ひそやかに。そっと。
ホームに降りた細い後ろすがたに焦がれた。
友達に瑞稀って呼ばれて向け返した笑顔に胸が騒いだ。
それでもあの頃はただ見ているだけで、時々運良く隣に立てるだけで、
それだけでよかったのに。
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作者名：冷麦
| 作成日時：2019年12月21日 1時
