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いつもはシャープペンシルを持っている節々した指が、私を捕まえた。
その指にすこし乱暴に横に引かれて、
冷たい白い壁にからだごと押される。
『…っ』
…逃げ場がない。
どうしよう。
勉強に適した明るさの蛍光灯が逆光になって、私のからだは七瀬くんの影に包まれてしまっている。
影だけじゃない。その腕が、私を強く押さえつけた。
いまこの部屋で向かい合っているのは私たちだけ。
七瀬くんと私だけ。
それを強く意識してからだがこわばる。
「…ずっと好きでした」
私の目を見ながら、私を影のなかにいれながら、
指を確かめるように触ってぎゅっと握る。
抑えるちからは強いのに、七瀬くんが触る指先は優しくて。
そんなに愛しそうに触られたことなんてないから、
私はますます意識してしまって。
逆光ですこしだけ暗くなった七瀬くんの目は、
それでも綺麗に潤んで私を見つめる。
…綺麗で、痛いくらい切ない目で。
七瀬くんはそのまま屈んで私の耳に顔を寄せた。
「男子クラスで女子と話せない病だったんです。
でも、絶対塾の最終日までに、誕生日までに克服するって決めて」
『話せない病…?』
「はい。頑張ってちゃんと克服できて。
…今日こうしてAさんと話せるようになったんです」
そう耳元で囁く。
私のからだにそっとふきこむように、
そして切なく置くように。
…話せない病、というのはよく分からないけれど。
これまで静かだと思っていたのは原因があったみたいで。
本当は話したかったんだ…私と。
そんな気持ちでいたんだ…七瀬くん。
その言葉の切なさと、その息の切なさで。
七瀬くんの想いが伝わってきて、
私は七瀬くんがとてもけなげに思えた。
…胸がぎゅっとした。
「…ずっと、言いたかった…」
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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年9月20日 18時