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そう思い直して、そっとおばあちゃんが着せてくれたゆかたを見る。淡藤色の綺麗なゆかた。
ゆかたを着せてもらって気分が上がっているから。久し振りのお祭りが楽しいから。
…手を繋いでしまったから。
だから、何か勘違いしてるのかも。私。
「Aちゃん?」
はっとする。
作間くんを見上げると、あの透明な目をしてこちらを伺っている。
「もしかしてずっと立ってたから疲れた?」
『ううん、そんなんじゃ…』
そんなんじゃないよ、って言いかけて、確かに履き慣れない下駄の足がすこしだるいって気付く。
「行こ、こっち」
そう言う作間くんに手を引かれて、屋台を抜けて、神社の赤い鳥居のなか、
入り口のくわっとした顔の狛犬の置物を過ぎて、ゆっくりゆっくり
手を繋ぐって多分麻薬みたいなものなんだって知ってしまったから、もうあまり繋ぎたくない。
おかしな勘違いを続けてしまいそうだから。
家族でも恋人でもないのに。
でも作間くんは前へ進む。
右手を引くその手は、やっぱり綺麗な指をしているって思う。
『作間くん、どこ行くの…』
着いた場所は、境内の奥、
後ろに木、下に石段、その更に向こうに赤い鳥居、遠くに屋台と赤い提灯がぼうっと広がって。
華やかな
目の前は夜の暗がりと、虫のささやき。
少し離れた神社は白い提灯にほんのり優しくあかりがともって、まわりを浮かび上がらせている。
いろんな場所にお祭りの気配がして、賑やかで活き活きしている。
まるでお祭り全体を上から見ているみたい。
もっと離れたところには、待ち合わせして通ってきた長い川も見える。森の服みたいな喫茶店も川沿いだから、ここからは見えないけれどあの近くにあるはず。
「ここ、座ろう」
そう言った作間くんは、バッグから布で出来たレジャーシートをひらりと広げて、四隅にその辺りの石ころを置いた。
『すごいね、ここ!…あと、これ持ってきてる作間くんもすごい。準備いいね、ありがと!』
そう笑いかけると、照れくさそうにへへっと笑う。
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冷麦(プロフ) - らぐさん» コメントありがとうございます! 高橋くんて「青春が服着て歩いてる」って思っているのでそのあたり表現出来たらなあと書いたので…すごく嬉しい感想をありがとうございます!2つめのほうもとても腑に落ちる言葉で嬉しいです、大切に読ませて頂きました! (2020年4月22日 19時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
らぐ(プロフ) - 冷麦さんが書く少し寂しい静かな作間くんも好きですが、青春臭く、キラキラとした優斗くんも大好きです!長くなってごめんなさい、これからも体調に気をつけて更新頑張って下さい^_^ (2020年4月21日 22時) (レス) id: 63299f834d (このIDを非表示/違反報告)
らぐ(プロフ) - 更新ありがとうございます!なんて言うんでしょう....すっごく青春を感じました、!!真っ直ぐな優斗くんも、優斗くんが大好きな主人公ちゃんも、不器用なお父さん(笑)もみんなが愛おしく、あーこんな気持ちも味わってたなーという懐かしく、温かな気持ちになりました。 (2020年4月21日 22時) (レス) id: 63299f834d (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - りおさん» りおさん、ありがとうございます!完結しました! ウキウキワクワクして読んでくださったなんて嬉しいです!私もその言葉につられてウキウキしてしまいました。本当に嬉しいです…!更新へのお心遣いも嬉しい…素敵な感想をありがとうございました! (2019年9月18日 11時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
りお(プロフ) - 完結おめでとうございます!短編集のはずなのにメンバーのストーリーがリンクしていると言うか、次の話のメンバーが出てきて次はこの人なのか!!とウキウキワクワクしながら読んでました!冷麦さんの作品すべてが好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年9月18日 9時) (レス) id: 65c270f629 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年8月27日 15時