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ゆうぴと別れて、そのまま何となく奥の蔵書スペースを覗きに行く。
ヒールを履いているから足音が図書館の板張りの床に響く。
オフィスカジュアルに則した膝丈のシンプルなスカートの裾を静かに捌いて、そうっと歩きながら、やはり完全には消せない足音。他の人に申し訳ない気持ちになる。
でも25万冊の蔵書と聞くと本好きとしてはワクワクする。うちの母校の何倍だろう。
昔読んでいて書い直そうとしたら絶版になってしまった文庫本、ここなら置いてないかな…周りに人も見当たらないし、少しだけ。少しだけ見よう。
開放的だったオープンスペースとは打って変わってスチール製の書架が並び圧迫感が増す。
その雰囲気に私は過去の本好きの血が騒ぎ出していた。
現代小説のコーナーに移動する途中、現代日本随筆のコーナーが目に止まる。
『懐かしい、この随筆のオムニバスシリーズ読んだなぁ。高校の頃』
白に紺の文字の背表紙。
「日本の名随筆」と銘打たれたその本は、全巻200冊で、各巻毎にテーマがあって、そのテーマにそって多数の著作が収められている。
「恋」や「旅」「猫」などのとっつきやすそうな巻を借りていた気がするけれど、「美談」「毒薬」なんてテーマもあるんだなぁ。
家にも職場にも近いし、松村珈琲亭にも歩いていける距離だから、今度借りに来よう！
楽しみが増えたな、と思いながら更に背表紙を目で追っていると、飛び込んできた「珈琲」の文字。
懐かしい、この巻も確実に読んでいる。
「珈琲」
手に取ろうと、少し高い位置にあるその本に手を伸ばす。
普通に頑張っても届きそうにない。あと少しなんだけど…
これ以上ない背伸びをしてやっと本の背表紙を触った瞬間。
ほぼ同時、誰かの手が触れた。長くて骨ばった指。男の人の手。綺麗な手。
触れた瞬間、自分でも驚くほどドキドキして、その手と比べてすごく小さい自分の手がなぜだか恥ずかしくて、消えて無くなりたくなった。心臓が跳ね上がってぎゅっとした。
急いで手を離す。
『ごめんなさい！』
この事態が恥ずかしい。自分が恥ずかしい。とにかく謝ってお辞儀をして立ち去ろう。
私の間抜けな高速お辞儀の最中、相手と目が合う。
立体的な顔だち。すっとしたあごから首のライン。目頭から続く控えめな二重、綺麗な白目。
…あれ、この人…
そこには。
至近距離、頭ななめ上20cmほど。
綺麗な手で「珈琲」を棚から抜きながら、その右肩越しにじっとこちらを見下ろしている端正さんがいた。
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冷麦(プロフ) - こうちゃさん» アッアーーーーーありがとうございます、嬉しい言葉ばかりで泣いています。 私もにやけて書いていた笑ので、同じ気持ちになってくださったこと、嬉しいです。車内ではご迷惑をお掛けして申し訳ありません笑引き続き読んでくださると嬉しいです！ (2019年8月3日 11時) (
レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
こうちゃ(プロフ) - わーーーーー！作ちゃんが可愛すぎて！がりさんと同じところで可愛いなおい、ってにやけてしまいました！しかも電車です！不審者不可避！でも最高です！ありがとうございます！！描写や冷麦さんが書く言葉が美しくてとっても好きです。これからも更新楽しみにしています (2019年8月3日 10時) (レス) id: 066b7f100e (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - 天然ぐりーんてぃーさん» 語彙力欠如嬉しいです！ぬぉわぁっに愛を感じます笑引き続き読んでくださっていて嬉しいです…ありがとうございます！北斗さんも引き続き登場しますのでよろしくお願いします！ (2019年7月24日 12時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
天然ぐりーんてぃー(プロフ) - ぬぉわぁっ！(作ちゃんが可愛すぎて語彙力欠如すみません)じれったいのに何処かホッコリとしていて温かいこのお話が大好きです！ほっくん、さりげなくキューピッドになりそうな予感(笑) (2019年7月23日 23時) (レス) id: 735b9b69af (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - 天然ぐりーんてぃーさん» 素敵な感想をありがとうございます！作間くんのそういうところが書きたかったのでとても嬉しいです！モチベーションが上がりました、引き続き読んでくださると嬉しいです。 (2019年7月9日 17時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷麦
| 作成日時：2019年6月20日 11時
