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作ちゃんも、もうひとつころころ転がった檸檬を手に取った。
長い脚で那須さんに歩み寄ってそれを手渡す。
「ありがとうございます…手が滑っちゃったみたいで」
那須さんは作ちゃんににこやかに挨拶している。
線みたいなえくぼと、左右対称に上がった口角の笑顔がやっぱり華やかだ。
あまり那須さんの邪魔をしても失礼だな、と気付いて、私は立ち去ろうとする。
『じゃあ…那須さん、失礼します。お疲れさまでした』
いつものようにお辞儀をして。
すると。
「Aちゃん。昨日ありがとう。一緒に遊べて、すごく楽しかった！」
那須さんがさっきの綺麗な笑みのまま、よく通る声で私にそう言った。
それは唐突に聞こえた。那須さんはなんだか唐突な発言が多い。
だって、今日の日中一緒にバイトしてた時、最初の挨拶でそんな会話をした。昨日ありがとうって。
いま何でまた繰り返してるんだろう。
…それに、遊んだ、って。
果たして私たちは遊んだのだろうか。
北斗さんのプレゼントを選んで、カフェでお茶を飲んで、駅で別れた。
…否定するほどでもないけれど、ニュアンスが違う気がする。
でも、那須さん的には昨日の北斗さんへの買い物で遊んだって思えるくらい、私は近しいバイト仲間。そういうことなんだろうか。
悪くは思われていないみたいだし、いいのかな。
…でも、なんとなく気になる。
那須さんの後ろには、もうひとつだけ黄色い檸檬が落ちていた。
それを取ろうと近づこうとして視界を広げると、松村珈琲亭の植え込みに咲く紫陽花が目に入る。
黄色い檸檬と、薄青色の紫陽花。
どちらも綺麗なはずだけれど、
もうすぐ夕暮れで完全に日が落ちかけている上にビルの影で、はっきりとそれぞれの色が認識出来ない。
店を出たばかりの時は通り雨の雫できらきらしていた紫陽花の花びら。
いまはもう分からなくて、名残惜しいって思う。
那須さんは、私が紫陽花を視界に捉えているのを見た。
それから笑顔でこう言った。
「…俺、紫陽花って苦手だな。
知ってる？紫陽花って毒があるって。」
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冷麦(プロフ) - こうちゃさん» アッアーーーーーありがとうございます、嬉しい言葉ばかりで泣いています。 私もにやけて書いていた笑ので、同じ気持ちになってくださったこと、嬉しいです。車内ではご迷惑をお掛けして申し訳ありません笑引き続き読んでくださると嬉しいです！ (2019年8月3日 11時) (
レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
こうちゃ(プロフ) - わーーーーー！作ちゃんが可愛すぎて！がりさんと同じところで可愛いなおい、ってにやけてしまいました！しかも電車です！不審者不可避！でも最高です！ありがとうございます！！描写や冷麦さんが書く言葉が美しくてとっても好きです。これからも更新楽しみにしています (2019年8月3日 10時) (レス) id: 066b7f100e (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - 天然ぐりーんてぃーさん» 語彙力欠如嬉しいです！ぬぉわぁっに愛を感じます笑引き続き読んでくださっていて嬉しいです…ありがとうございます！北斗さんも引き続き登場しますのでよろしくお願いします！ (2019年7月24日 12時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
天然ぐりーんてぃー(プロフ) - ぬぉわぁっ！(作ちゃんが可愛すぎて語彙力欠如すみません)じれったいのに何処かホッコリとしていて温かいこのお話が大好きです！ほっくん、さりげなくキューピッドになりそうな予感(笑) (2019年7月23日 23時) (レス) id: 735b9b69af (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - 天然ぐりーんてぃーさん» 素敵な感想をありがとうございます！作間くんのそういうところが書きたかったのでとても嬉しいです！モチベーションが上がりました、引き続き読んでくださると嬉しいです。 (2019年7月9日 17時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷麦
| 作成日時：2019年6月20日 11時
