・ ページ19
そのとき。
渡辺はふと、思う。
銃を撃ちながら男のほうをぐっと睨むと、男の近くで突然普通ありえない風が、一瞬、起きた。
「うお、！？」
男はぐらりと姿勢を崩し、それを見て宮舘は更に距離を詰める。
そのナイフは確実に腹に刺さり、男の腹から血がナイフを伝って落ちる。
その時の宮舘はその風を愛しいものでも見るように優しく微笑んでいた。
男はよろよろとした動きで2人から距離を取る。
さっき宮舘に刺されたからか、それとも渡辺がうまく気配を消したのか。
男は宮舘を注視し、宮舘にナイフを構える。
パシュ、と音がしても、男は反応することができなかった。
男の右肩に当たった弾は、男の肩をしっかりと壊す。
肩がだらんと下がった男は、不格好に、手首だけでナイフを構えていた。
「…お前らさ、だっるいわぁ…」
dt・nb「……」
「……だぁっ、くそ…」
声からも余裕がなくなり、いつもと変わらない2人にも苛立ちを隠せない。
しかし男のとった行動は極度の苛立ちからは想像もできない、冷静なものだった。
冷めたような、それでいて舐めるように2人を見、飛んできた弾と刃を避けるだけ。
今、攻めなければ。
ナイフが風をきる音と、サイレンサーのパシュ、という小さな音だけが彼らの耳に入る。
そこに男の音は、なかった。
しかし男は諦めたわけではなくて。
もちろん2人も分かっていたが、どこで攻めてくるのかまでは分からなかった。
渡辺の銃が空っぽになって、素早く装填し直す。
脇腹が痛み、いつもより少し遅い。
それでも一般的には早いほうなのだが、それでも男はそれを待ってたと言わんばかりに上を向いて、渡辺と宮舘に右手と左手で2本ずつナイフを投げた。
nb「……へっ」
dt「っ、翔太…！」
渡辺は反応できずギュッと目をつぶる。
それでも痛みが来なくて、何かがカラン、と落ちる音がする。
そっと目を開けると、宮舘がこっちを向いていて、床には男のナイフが2本、宮舘の出現させたであろう、見慣れたナイフが2本あった。
それを見て、渡辺は宮舘がナイフが当たる前に他のナイフを創りそれに当ててナイフの勢いを殺したのだと知る。
dt「翔太、怪我は？」
nb「ない。ありがと」
喋らないんじゃねぇの、なんてそう思いながら、それでも愛しそうな顔でそう言うと、宮舘は小さく微笑む。
それから、何も言わずに前に倒れた。
少し下あたりの背中からは男のナイフが生えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 365人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かれん(プロフ) - るむぽさん» わー!?誤字報告感謝です!!すっごく助かります！訂正させていただきました！ (2020年8月26日 21時) (
レス) id: f582612e68 (このIDを非表示/違反報告)
るむぽ(プロフ) - 10ページ？の阿部ちゃんの漢字が「安倍」になってますよ^^ (2020年8月26日 20時) (レス) id: f787327a83 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます！これからもお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年8月26日 17時) (レス) id: f582612e68 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - すごく面白いです！更新頑張ってください！応援してます (2020年8月26日 15時) (レス) id: 721259c029 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かれん | 作成日時：2020年8月22日 9時
