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** スコッチ side
.
あの時...
あいつも、この少女のように泣いて過ごしていたのだろうか。
両親が突然死んで、途方に暮れていた俺たちを嫌々引き取った親戚。
引き取ってくれただけでも有難いと思わなきゃいけないのは分かっているが...
俺はまだマシだった。
問題は、Aの方。
正直、俺らの両親は親族にあまり良い印象を持たれていなかったことは幼いながらに理解していた。
特に、Aを引き取った母方の妹夫婦には憎まれていた。
Aを俺らの両親に重ねて酷い仕打ちをしていたらしい。
Aが事件後に入院した病院の医師から、傷だらけの体の診断書を渡された時はもう...
言いようのない憤りで全身が震えた。
できることなら、俺の手で...と思ったくらいに。
...なのに。
「ねえ!離してって言ってるでしょ!?」
俺は一体、何をしているのだろう。
「ガタガタうるせぇな...だからガキは嫌いなんだよ」
「ライ、」
愛する我が妹が受けた傷を自らの手で蒸し返すような真似をして。
...俺はこんなことをするために、今まで生きてきたんじゃない。
俺はただ...ただ...
またAと一緒に...
「おい、スコッチ」
「...」
「おい、どうした」
「...え、」
いつの間にか俺の正面に座り込んでいたライ。
眉をひそめて俺の顔をじっと見ている。
「...別に、どうもしてねえよ」
「額に大汗かいてる奴の言う台詞か」
そう言われて慌てて袖口で額を擦ると、確かにぐっしょりとシミができた。
ははっ、もうどうしようもねえな...俺。
「とりあえず、このガキをどうするかだな。居場所を吐いてくれなきゃ使い物にならない」
「なあ、ライ」
「...ん?どうした」
誰にだって、どうしても曲げたくないものがある。
それが例え、この先生きていくのに支障をきたすことだとしても。
決して譲れないものが、きっと誰にでもあるはず。
俺にとってそれが...
「逃してやらねえか、この娘」
「...いきなり何を言い出すんだ」
こいつは本当にすごい男だと思う。
顔が変わらないんだ。
いつどんな時だって、この男は己の崩れた顔を一瞬足りとも見せない。
現に今も、台詞と顔が合っていない。
「なんか...可哀想じゃん。手首もほら...赤くなってる」
理由なんてどうでもいい。
きっとこの男なら...ライなら分かってくれるはずだから。
俺の、心からの叫びを。
「...」
「...」
なあ...ライ。
俺の言いたいこと、分かるよな?
.
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あーさ(プロフ) - とても深いグリーンさん» ご愛読ありがとうございます!r18タグに関しましては目次のページを御覧下さい♪ (2018年4月19日 1時) (レス) id: 40de11ab60 (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)ところで話は変わるんですが、どうしてR-18になってるんですか? (2018年4月18日 23時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 佰さん» なんと嬉しいお言葉...(T^T)書きたいときに書く気分屋野郎ですが、よろしくお願いします! (2018年3月1日 17時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
佰 - すごくいい話ですね!もう感動しました。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2018年2月27日 21時) (レス) id: e1e57bb127 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 那月さん» はじめまして(^^) な、なんと...!貴重な情報提供をありがとうございます!間違ってなくてよかったです...とても安心しました(^◇^) (2017年10月1日 20時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
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