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陣平さんのお墓詣りを終えた足で、すぐに空港へと向かった。
何があっても、今は仕事が優先だから。
悲しみの余韻に浸っている時間さえもない慌ただしい日々に、少しだけ感謝する。
この忙しさが、立っているのもやっとな不安定な私を支えてくれているから。
ずっと心の支えになってくれていた人が死んだ。
でも、もう不思議と涙は出てこない。
遠ざかっていく日本の風景を空から眺めている今の私には好都合かもしれないけど。
...こんなふうに考えられるようになってしまったのは、やっぱり。
もう、もともと彼とは住む世界が違ってしまっていたからかもしれないと思ったら。
それはそれで寂しいし、悲しかった。
搭乗口に入る直前に、お兄ちゃんに一報打っておいた。
同期で仲が良かった兄ならもう知っているかもしれないけど。
《先日、陣平さんが亡くなりました。____________ 》
文字にした瞬間、"あぁ、彼は死んだんだ"ってやっと実感が湧いた。
彼のお墓を見ても、まだどこか信じられなくて。
でもやっと、やっと痛いぐらい理解した。
これで少しは気持ちの整理ができたはず。
...そう思っていたのは自分だけだったようだ。
「A、あなたこっちに帰ってきてからおかしいわよ」
まさかこのひとに言われるとは。
心配そうに私を見つめるジョディ先輩と目が合う。
「...そうですか?別にそんなこと、」
「資料、逆さまよ」
「...」
はぁ、といつかの誰かさんの真似をするように溜め息を吐かれた。
「あっちでシュウと喧嘩でもしたの?」
「...喧嘩で済むなら安いもんじゃないですか」
「は?」
悪いけど、今はジョディ先輩に言う気にはなれない。
まあ、仕事だけの付き合いの彼女に言う必要なんてないんだけど。
彼女みたいなタイプの女性って、仕事とプライベート関係なく干渉してきそうで面倒臭い。
「お先に昼休憩失礼します」
「え、ちょっと、」
こういうのは避けるに限る。
...というより、あまり考えたくなかった。
頭の中では理解した。
陣平さんはもう、この世にはいない。
4年前に亡くなった萩原さんや、私の両親のいる天国へと旅立ったんだ。
両親は私が生まれてすぐに亡くなったらしいから、会ったことがないのもあってそこまで悲しいと思ったことはない。
だから、初めてだった。
自分の周りから誰かがいなくなるという経験は。
こんなにも悲しくて、思い出せば涙が滲んで。
苦しいものだったなんて。
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-sacrifice of love- [裏切りのステージ]→←4
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あーさ(プロフ) - とても深いグリーンさん» ご愛読ありがとうございます!r18タグに関しましては目次のページを御覧下さい♪ (2018年4月19日 1時) (レス) id: 40de11ab60 (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)ところで話は変わるんですが、どうしてR-18になってるんですか? (2018年4月18日 23時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 佰さん» なんと嬉しいお言葉...(T^T)書きたいときに書く気分屋野郎ですが、よろしくお願いします! (2018年3月1日 17時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
佰 - すごくいい話ですね!もう感動しました。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2018年2月27日 21時) (レス) id: e1e57bb127 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 那月さん» はじめまして(^^) な、なんと...!貴重な情報提供をありがとうございます!間違ってなくてよかったです...とても安心しました(^◇^) (2017年10月1日 20時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
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