【名探偵コナン】この世に存在するすべての悲しみを私に。-2-

4 ページ49

** 秀一 side
.



目に涙をためながら無理矢理笑顔を作ろうとする彼女を見て、俺は全てを悟った。



「お前、知ってたな？知っていてなぜ俺から離れない！？お前を利用していたんだぞ！！」



その言葉に、静かに彼女は一度目を瞑った。
そして、またゆっくり目を開けると、俺が幾度となくさせてしまった顔をしていた。



「言わなきゃ、分かんない...？」



最初から分かっていたはずだった。
いつかは終わりが来るということを。

だから、彼女が本気にならないように。
いざという時に、俺をすぐに捨てられるように。
絶妙なバランスを保ちながら交際を続けていこうと決めていた...

はず、なのに。

いつしか俺が本気にならないように。
いざという時でも、彼女が傷つかないように。

どれもこれも年月のせいだ、ということにしておきたいくらい。
3年も付き合えば情が沸くのは自然の摂理。
そう...きっと、そうだ。



彼女は別れ際にこう言った。



「大君は...私のこと、ひとりの女として見たことはある？」



ずっと"都合のいい女"だったか、と。

勿論、俺の返事は...



「どうだったかな。風呂上がりに美味い飯を食わしてくれる存在...ってところか」



...違う、全然違う！
俺は彼女のことを1人の女性として心の底から愛した。
それが...全てだ。



「...っ、そっか！...うん、そうだよね」



彼女の頬の上を一筋の大粒の涙が走っていった。
嘘つきと言われることを期待していた自分が情けなくなったのと同時に。
思わずそれを拭おうとする腕をなんとか抑えて、俺は彼女に背を向けた。



「...じゃあな。今度は、もっといい男と付き合えよ」



これに対する彼女の返事はなかった。

一歩一歩遠ざかっていく、彼女と俺の距離。
もう二度と、この距離が縮まることはない。
そして埋められることも、ない。



窓をノックし、車のロックを解除したAは...静かに泣いていた。



「なぜお前が泣く」
「いや、だって......赤井さんも...明美、さんも2人とも......後悔しかしてないからっ...」
「...潜入捜査の関係で繋がる男女関係なんて、どちらかが本気になればどちらかが傷つくもんだろう」
「でも、どっちも本気になったら......どっちも傷つくじゃないですか！」



あぁ......これだから、女の涙ってのは面倒くさい。
そう思いつつも、俺の分まで泣いてくれている彼女に少し感謝した。



.



＞続きはしばしお待ちを！

この小説の続きへ→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す