【名探偵コナン】この世に存在するすべての悲しみを私に。-2-

3 ページ48

.


ジョディ先輩の時みたいにこっそりつけるのは後ろめたさがあったので、今回は本人に堂々と盗聴宣言をすることにした。
別に他人の色恋を面白がってるわけでも、赤井さんを信用していないわけでもない。

宮野明美の言動が気になるからだ。
赤井さんもそれは察してくれたようで、快く盗聴器をコートの裏につけてくれた。

彼女に目をつけたときから気になっていた点が幾つかあった。
妹が天才科学者でありながら、姉の当人は普通に学校に通い、就職もできた。
組織の末端と言われていたようだが、組織の幹部クラスである妹と非常に仲が良いという情報から推測するにある程度のスペックは備わっているだろうと私は考えた。

だから、もしかしたら彼女はもう...


そこまで考えた時、イヤホンから"大君"と赤井さんを呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
...諸星大という偽名も、今日で最後だろう。



〈すまん、待ったか〉
〈ううん、全然。今来たとこだから気にしないで〉



赤井さん、こんな柔らかい声出せるんだ......聞いたことないや。
やはり、盗聴はあまり良いものじゃないな。



〈ていうか、お腹空いてない？何か食べに行こうよ〉
〈いや、明美...すまん、その前に話がある〉
〈あ、そうだったね......いいよ、何？〉



彼女の声色が何だかおかしい。
パソコンで声紋分析をしているが、声の緊張状態にブレがある。



〈俺は......組織を抜けなければならなくなった〉
〈...え？〉



その言葉が意味することを、彼女はきっともう分かっているんだ。



〈つまり、お前とはもう終わりにしなければ、〉
〈なんで？どうして？...職がないことを言ってるなら一緒に探せば、〉
〈そうじゃない。そうじゃないんだ...俺は...〉
〈俺、は...？〉



赤井さん、ここが踏ん張りどころです。
今ここで言わなきゃ、一生彼女に伝えられることはないんですから。



〈俺は、合衆国の警察機関・FBIの人間だ〉
〈合衆国って...アメリカの？大君、英国人じゃなかった？〉
〈出身は英国だが、FBIに入るために米国籍を取得したんだ〉



しばらく彼女の声が聞こえなくなった。
聞こえるのは近くにあるだろう噴水の水の音と、赤井さんの心臓の音だけ。



〈...大君が、FBI？...アハハ！馬鹿ね...嘘つくならもっとマシな嘘ついてよね...〉



あっ......彼女は今、



〈そんなんじゃ...全然驚かっ...〉



彼女は今、静かに泣いている。



.

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す