【名探偵コナン】この世に存在するすべての悲しみを私に。-2-

1 ページ46

.


私の言葉に、キャメルやジェームズさんを含む全捜査員が黙り込んだ。

しかしどうしよう、自分が怒り出したのが原因なのに非常に気まずい。



「あの......すみません、」
「いや、お前が謝る必要は無い」



ん？今の声って...ジェームズさんじゃないとしたら...
_________ もしかして。



「あ、赤井しゃん！」
「赤井さん、もうパスポートの手続き終わったんですか！？」



数時間前まで現場で顔を合わせていたが、直接話すのは数年ぶりの捜査官もいる。
私は電話だったりメールだったり、時には直接会って話もしていたのであまり新鮮ではないが、この状況であの言葉はとても救われる思いがした。



「あぁ。ジェームズがもう手配してくれていたようだ。もしかすると、作戦の失敗は彼の仕事の速さが原因かもしれないな」
「人聞きの悪いこと言わんでくれよ、赤井君」



赤井さんは私たちの前を通り過ぎると、未だ正座状態のキャメルの前に仁王立ちになった。



「いいか、キャメル」
「は、はぃ...」



きっと殴られると思って怯えているキャメル。
周りもそうだろうと、あの眉1つ動かない表情を見て思っているはずだ。

でも、赤井さんは殴ったりはしないだろう。
強面で報連相もできないしぶっきらぼうだけど、誰よりも人の気持ちを汲み取ろうとしてくれる人だ。



「確かに今回お前はヘマをした。Aの言い分は最もだ。その責任を取らされて組織から離脱するのが一般的だが、それはあくまで"一般的な"組織の話。各々の能力を生かしてこそ、初めて共同捜査の良さが生まれる。ただ、同じ失敗はするな。期待してる」
「あ、ありがとうごじゃいます...！」



憧れの赤井さんの温かい鞭を受けて、さらに泣き出したキャメルはさておき。
もう日本に用がない我々は帰らなければならない。

だが、赤井さんは何度も腕時計をチェックしては落ち着かない様子だった。



「赤井さん、どうかなさったんですか？」
「あぁ...この後、明美と待ち合わせをしていたんだが......間に合いそうにないな」



...そうか。
今回の一件で、あか......コードネーム・ライがFBI出身のノックだということはすぐに知れ渡ってしまう。
赤井秀一、の名前も広まるだろう。

その前に、別れを告げなければならない...大事な人が彼にはいるようだ。



「いつ、どこで待ち合わせですか？」
「6時半に杯戸公園だが、」
「飛ばします。乗って下さい」



.

2→←- re-starting and farewell -

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す