【名探偵コナン】この世に存在するすべての悲しみを私に。-2-

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どうして、気付いてあげられなかったんだろう。

どうして、もっと話を聞かなかったんだろう。

どうして、あの時 ____________




考え出したらきりがないほど、後悔が溢れてくる。




「_______ ×月×日未明に、未来を背負って立つ若き天才プログラマー、ヒロキ・サワダ(8)がシンドラーカンパニー本社の屋上から自ら身を投げ亡くなりました _____」




テレビをつければ聞こえてくる、ヒロキを悼むアナウンサーや専門家の声。

まだ若いのに可哀想、これは世界的損失だ、どうして周囲の人間は気付けなかったのか _____




「何が世界的損失だ...笑わせないでよ」



思わず零れ落ちた言葉はとても乾いていた。
きっとこの専門家達は、ヒロキのことを今まで一度も"子供"だと思ったことがないのだろうけど。

...所詮、赤の他人に抱く印象なんてそんなものだ。

だからどこかで誰かが死んでも悲しみに暮れるのは周囲の人間だけ。
こんな当たり前のことを、どうして今まで気付けなかったんだろう。



「_____ そして今朝10時頃、シンドラーカンパニー取締役兼社長であるトマス・シンドラー氏がコメントを発表しました ______」



もう亡くなってから3日以上経っているのに。
きっと、ヒロキが自ら命を絶った原因で不利になる証拠を隠滅するのに時間がかかったのだろう。



「『マスコミ各社、そしてシンドラーカンパニーを支えてくださる皆様へ。この度は世間をお騒がせして申し訳ありません。彼がここまで追い詰められていたことを気付けなかった私は、経営者としてだけでなく人間としても失格です。ですが、これまでヒロキが作り上げてきた素晴らしい作品たちを世に貢献させることが、父親代わりである私の精一杯の彼への償いであると考えています。今後とも精進して参りますのでよろしくお願い致します ________ 』」



「........はっ、」


なに、このふざけた文章は。

ここまで...ここまでふざけた人間だとは思っていなかった。
何が償いだ、何が精進するだ。


ヒロキはお前の...お前の奴隷なんかじゃない！



頭の中で何かの線がプツッと途切れたのを感じた瞬間、私は放ってた上着を掴んで玄関に向かっていた。

あの親父に言わなきゃ。
じゃなきゃ、樫村さんも奥さんも...ヒロキも。

こんな悲しい結末で終わらせやしない。


そう誓った矢先に、突然上着のポケットの中の携帯が着信を告げた。
...新たな悲劇の始まりの音が鳴り響いたのだ。


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