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「今思えば、あの時彼の胸ぐらを掴んででも取りやめてもらえば良かった...」



樫村さんの眉間に深く刻まれた皺は、後悔と憎悪に満ち溢れていた。

そして、私はここで引っかかったことがある。
彼の態度は少し大袈裟なのではないだろうかと。

だって、ヒロキの母親はもう2年も前に亡くなっているのに。
今更という言い方は少し酷いかもしれないが、後悔するまで間が開きすぎてはいないだろうか。

血のつながった子供だから、我が子の成長ために別れざるを得なかった奥様だから引きずるのは当たり前だと言われたらそこで終わってしまうが...。

"今思えば"、この言葉も気になる。
シンドラー社長の胸ぐらを掴んででもやり遂げれば良かったことをやらなかったせいで、今何か問題が起きている、とか。
もしかしたら、樫村さんの私に相談したいことってこのことに関係しているんじゃ。



「あの...実は私が今日あなたに相談したいことというのは、この事に深く関連しているんです」



予想していた言葉のはずなのに、こんなにも胸が騒がしいのはなぜだろう。
私はこのざわめきを知っている。
つい最近、感じたばかりのこのざわめきを。

まさか...そんな、まさかね。

...あれ、私、前にも"まさか"って繰り返しながら。
最も願っていなかった最悪の結末を見ることになっていなかったっけ。



「まだ、どこのメディアにも知らせていないんです。知っているのは、私と...シンドラーカンパニーの上層部のみ」



やだ、やめて。



「つい3日前に、


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ヒロキが亡くなったんです」




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「...っ、」
「気がついたかい?」



なかなか開かない目をこじ開けて見えたのは、まっさらな白い天井。
そして、ほっとしたように息をついたジェームズさん。



「私、何が...」
「いきなり倒れたそうだ。大丈夫、樫村さんには帰ってもらったよ」
「...そう、ですか」



私、倒れたんだ。
そっか......倒れるくらい、樫村さんの言葉が。




___________ ヒロキが亡くなったんです




「事情は聞いたよ......辛かったな」
「ご心配をおかけして、申し訳ありません」
「なーに、部下への心配も仕事の内さ」



ジェームズさんは優しく微笑みながら窓の外を見た。


私が、雲一つない青空が嫌いになったのはこの日からだったと思う。
私は空が憎くて堪らない。


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あーさ(プロフ) - とても深いグリーンさん» ご愛読ありがとうございます!r18タグに関しましては目次のページを御覧下さい♪ (2018年4月19日 1時) (レス) id: 40de11ab60 (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)ところで話は変わるんですが、どうしてR-18になってるんですか? (2018年4月18日 23時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 佰さん» なんと嬉しいお言葉...(T^T)書きたいときに書く気分屋野郎ですが、よろしくお願いします! (2018年3月1日 17時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
- すごくいい話ですね!もう感動しました。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2018年2月27日 21時) (レス) id: e1e57bb127 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 那月さん» はじめまして(^^) な、なんと...!貴重な情報提供をありがとうございます!間違ってなくてよかったです...とても安心しました(^◇^) (2017年10月1日 20時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーさ | 作者ホームページ:nothing  
作成日時:2017年10月1日 0時

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