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あれからすぐに空港へ戻った私は、いつもと同じようにワシントン行きの航空チケットを買った。
驚くほど、何も変わっていない。
ものすごく普通だ、不自然すぎるくらい普通だ。
今日1日で唯一の身内が亡くなったというのにこの落ち着き。
涙が涸れるまで泣いて、目を真っ赤に腫らして、膝から崩れ落ちて。
...現実なんて、こんなものなのだろうか。
鞄に入れた、赤井さん曰く兄が最期まで手放さなかった携帯電話。
正直、完全な修復は不可能だろう。
弾丸が貫通した位置からすると、SDカードもバッテリーも粉々だろう。
水没だったらまだ望みはあったのだけど。
___________ "機密情報といえば機密情報だが、単なる情報だけじゃない"
彼はこの携帯のことを知っていたのか。
知らなきゃあんなことは言えないはずだし。
...兄と赤井さんは、仲が良かったのかな。
仲が良かったとは違うかもしれないけど。
でも、きっと同僚以上の親近感を感じられたはずだ。
同じ潜入捜査官として...そして、"長男"として。
赤井さんとお兄ちゃんは、どんな話をしたのだろう。
兄は人を簡単に信用しやすい性格だから、潜入捜査してるって聞いた時は驚いたな。
その真逆で、赤井さんは疑り深い人。
初めて同じ部署に配属になった時の尋問は今となっては笑い話だけど。
兄と話したのは、証人保護プログラムを受けるって電話したのが最後だった。
お兄ちゃんは、"そうか"と一言だけだった。
もっと話しておけば良かった。
...なんて後悔しても、もう遅い。
お兄ちゃんは、もうこの世にいないのだから。
_____「どうした、A」
_______「...そっか。まぁ難しいよな、女友達の関係って」
_____「でも、俺はどんな時でもお前の味方だからな」
_______「女友達がいない?んなもん作る義務なんてねぇんだから気にすんな」
_____「お前はお前らしく生きればいい」
_______「俺、好きだったぜ。お前のこと」
幼少期は女友達がいないことにずっと悩んでいた。
女友達がいないから男の子と遊ぶしかなくて。
でも、そうすると女の子達に目をつけられて段々と男の子達も離れていった。
また、母の妹夫婦のこともあって、当時私は完全に人間不信状態だった。
頼れるのは兄だけ。
でも、こんな私を受け止めてくれた人は兄だけじゃなくて。
陣平さん......兄が忙しい時に色々なところに連れて行ってくれた。話を聞いてくれた。
...もう、私の良き理解者はこの世に誰一人いないんだ。
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あーさ(プロフ) - とても深いグリーンさん» ご愛読ありがとうございます!r18タグに関しましては目次のページを御覧下さい♪ (2018年4月19日 1時) (レス) id: 40de11ab60 (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)ところで話は変わるんですが、どうしてR-18になってるんですか? (2018年4月18日 23時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 佰さん» なんと嬉しいお言葉...(T^T)書きたいときに書く気分屋野郎ですが、よろしくお願いします! (2018年3月1日 17時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
佰 - すごくいい話ですね!もう感動しました。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2018年2月27日 21時) (レス) id: e1e57bb127 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 那月さん» はじめまして(^^) な、なんと...!貴重な情報提供をありがとうございます!間違ってなくてよかったです...とても安心しました(^◇^) (2017年10月1日 20時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
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