【名探偵コナン】この世に存在するすべての悲しみを私に。-2-

2 ページ22

.



その言葉を聞いて初めて、彼の服に返り血を浴びた痕跡があることに気付いた。



________ あいつの"最期"に立ち会ったのは...俺1人だ

____ 俺が死に追いやったようなものかもな


彼の言葉と、使い物にならない血だらけの携帯電話、彼の服に付いた血痕。


全てのピースが目の前で合わさっていって、完成してしまった。
"最も願っていなかった結末"という名のジグソーパズルが。



「嘘、つかなくて結構です」
「...」



俺が死に追いやったなんて、かっこつけみたいな台詞。
そんなこと、今は言ってほしくなかった。



「大体見えましたよ。兄の最期」



赤井さんはありえないと言うような顔をして私を見た。
初めて、目が合った。



「あくまで推測ですので、間違っている箇所があれば訂正をお願いします」



兄は組織の人間に外部出身の疑いをかけられ、この屋上まで逃げてきた。
そのことを知らなかった赤井さんはこのビルに入っていく兄の様子から大体のことを察して、兄の身の危険を感じて追いかけた。
携帯電話に空いた穴の大きさから凶器はおそらく拳銃。
自決を図ろうとた際に赤井さんの邪魔が入ったが、赤井さんが見せた隙のほんの一瞬を狙って、兄は心臓に突き立てていた拳銃の引き金を引いた。



「...100％息の根を止められる蟀谷(こめかみ)でなく心臓部を狙ったのは、機密情報が詰まったこの携帯電話を所持していたから。己の命と共に抹殺するために」



話していてい驚いたのは、何も感じなかったこと。
その場に居合わせていなかったのに、まるでその現場を見ていたかのように口から言葉が出てきた。



「...さすがだ。どこかで見ていたのか？」
「そんなわけないじゃないですか」
「だが一つだけ付け加えさせてくれ」



赤井さんはこちらに向き直ると、一呼吸置いて話し始めた。



「その携帯のことなんだが...機密情報といえば機密情報だが、単なる情報だけじゃない」



その先は自分で調べろ。
彼はそう言って、この屋上を後にした。


その後ろ姿を見届けて、兄が自分の最期に選んだこの屋上をゆっくり見て回った。



「...ここ、」



そしてまた新たに気付いた。
この屋上からは、私たちが住んでいたアパートや、私と兄が通っていた小中高、警察学校、そして...



「杯戸ショッピングモール...」



私と兄、そして彼の良き親友であった陣平さん。

お兄ちゃんは、自分の最期がすぐそこに迫ってきていたことを察知して、この場所を選んだのかな。

.

3→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す