-the beginning of tragedy- [揺れる警視庁 1200万人の人質] ページ1
.
.
画面に表示された名前は、私が絶対にそうであって欲しくないという願いを打ち砕く爆弾としては十二分だった。
なかなか電話に出ない私に、不思議そうに運転手が声をかけてきた。
「出なくていいのかい?友達、無事だったんじゃないか?」
...無事の電話だったら、どれほど良かっただろう。
でも、このまま出なかったら?
まだ私の推測でしかないこの恐怖を、もしかしたら綺麗に拭ってくれるかもしれないのに。
でも、おそらく......いや、もう確信に変わってしまった。
彼はきっと、今...
ずっと鳴り続ける電話に、勢いに身を任せて通話ボタンを押した。
『...もしもし』
『お、やっと出たか。遅えじゃねえか』
...彼の声だ。
兄と同じくらい、心の拠り所としていた陣平さんの声だ。
『...ごめん。ちょっと手が離せなかったから』
『勝手にかけたのは俺だから気にすんな。それより今は大丈夫なのか?電話しても』
『うん...大丈夫、だよ』
彼の声は、2年前に警察学校で会った時と変わっていないように思えた。
でも、明らかに違うのは...
彼の後ろから、沢山の人達のどよめきが聞こえる。
そのどよめきをかき消すように、パトカーや救急車、消防車のサイレンも聞こえる。
『聞いてくれよ、A。俺、今観覧車乗ってんだよ。しかも1人で』
この言葉に、全身の汗が一気に引いていくような寒気を感じたのと同時に。
このうるさすぎる胸騒ぎの原因が、本当の意味で確証に変わった。
『...へぇ。何でこの時間帯に、1人で観覧車なんか...』
『んー...ちょっと色々あってな』
自分で聞いて欲しそうに言ったくせに。
何で...何で答えないのよ。
『そ、それより、いきなり電話なんかしてどうしたの?そっちこそ今仕事中じゃないの?』
確証に変わってもまだ、まだ違うと本人に否定して欲しくて。
『...お前の声が聞きたくなったんだ。もうすぐあの世へ行くって分かったらよ』
.
.
.
.
.
...この人は、恐ろしいくらいに私の悪い予感を一つ一つ形あるものにしていくんだ。
『あ、あの世...?』
『おう。やっと萩原と話ができそうだ』
...萩原、さん。
最後に陣平さんに会った日の彼の言葉を思い出した。
______ あいつに女々しいくらいに毎日メール送ってんだけどさ...返信が一向に来ねえんだ。
___ 俺は萩原を殺した爆弾の作り手を捕まえるまでは絶対に死にたくねんだよ。
.
.
180人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーさ(プロフ) - とても深いグリーンさん» ご愛読ありがとうございます!r18タグに関しましては目次のページを御覧下さい♪ (2018年4月19日 1時) (レス) id: 40de11ab60 (このIDを非表示/違反報告)
とても深いグリーン(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)ところで話は変わるんですが、どうしてR-18になってるんですか? (2018年4月18日 23時) (レス) id: 629a69f0d0 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 佰さん» なんと嬉しいお言葉...(T^T)書きたいときに書く気分屋野郎ですが、よろしくお願いします! (2018年3月1日 17時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
佰 - すごくいい話ですね!もう感動しました。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2018年2月27日 21時) (レス) id: e1e57bb127 (このIDを非表示/違反報告)
あーさ(プロフ) - 那月さん» はじめまして(^^) な、なんと...!貴重な情報提供をありがとうございます!間違ってなくてよかったです...とても安心しました(^◇^) (2017年10月1日 20時) (レス) id: 611fb27d39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ