番外編 満月の夜なら ページ39
セブルスside
満月が柔らかな光の帯を垂らしている夜。
Aは我輩の部屋にいた。
あのルーピンが来てから彼女が我輩の部屋で過ごす時間はめっきり減った。
甘いものが好きな彼女が同じ様な食べ物を好む奴と一緒にいるのは不自然ではない。
しかし今まで何度退室を促しても動こうとせず、挙句勝手に部屋に入って紅茶を飲んでいた相手とプライベートでの関係を全くと言っていい程無くすというのは如何なものか。
だが月に一度の満月の夜だけは我輩が彼女と過ごせる日だ。
ルーピンが変身に耐えている間彼女は暇を持て余しているから代わりに我輩の所に顔を出す。
代わりにというのがムカつくが貴重な時間なのでスルーしておく。
こんな貴重な時間なのだ。
だから今くらい奴の話をしなくてもいいのでは無いのか!?
「どうしたのセブルス。凄い顔。」
我輩にその凄い顔をさせているのは貴様だ！と怒鳴ってやりたかったが、久しぶりに発された我輩の名に嬉しさを覚えて黙る。
彼女が呼ぶ我輩の名は特別な甘美な響きを持つのだから、惚れた弱みというのは恐ろしい。
「どうしたらそんなに甘いものを食える様になるのかと思ってな。」
甘く、ぐじゅりというように口内を犯す物は幼い頃から不快でしかなかった。
「あら、失礼ね。美味しいのよ。」
そう言ってケーキを頬張るA。
何時もなら見ているだけで吐き気が襲ってくるのに今はそれを味わってみたいと思っている。
君が口にするそれに嫉妬しているのかもしれない。
他のどんな食べ物よりも甘く見えるその唇に触れることが許されているそれに。
我輩がじっと見つめているのを勘違いしてケーキを差し出してくる彼女。
仕方なく口に含むとやはり甘すぎるクリームが口全体に広がり喉を圧迫した。
「どう？」
そう尋ねる彼女の口の端にクリーム。
それを掬って更に口に入れればさっきより甘く感じて。
「甘すぎる。」
赤くなる彼女を抱き締めてやると呟く。
「満月のせいかしら。
完成じゃない私達でも完全な円形となる様に溶け合って一つになれるんじゃないかって思っちゃう。」
君の望みなら、という言葉の代わりに強く抱き締めると彼女が少し笑った気がした。
2人の心は混じって溶けて一つになる。
傍に居て欲しい。
彼女の方は代理がきいて、我輩の方は彼女だけを望んでいるとしても。
今この瞬間、2人の想いが重なった。
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夜彩(プロフ) - ありがとうございます！励みになります！ (2018年12月2日 8時) (
レス) id: 3659269758 (このIDを非表示/違反報告)
Lei01(プロフ) - このシリーズ大好きです！更新ありがとうございます！！ (2018年12月1日 21時) (レス) id: 5adfb421b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2018年12月1日 16時
