第90話 ページ40
ハリーside
セストラルは、目的地を定めたかのように猛スピードで夜を貫いていた。
胃袋がグラッとしたかと思うと、馬の首に沿って少し前に滑った。
ついに降りはじめたのだ…
明るいオレンジ色の灯りがだんだん大きく丸くなってきた。
全員の目に建物の屋根が見え、光る昆虫の目のようなヘッドライトの流れや、四角い淡黄色の窓明かりが見えた。
全員が矢のように歩道に突っ込んでいく。
最後の力を振り絞ってセストラルにしがみつき、急な衝撃に備えたが、馬はまるで影法師のようにふわりと暗い地面に着地した。
セストラルが見えない三人は、しっかりした地上に戻れてほっとした顔だ。
僕は感謝を込めてちょっとセストラルを撫で、先頭を切って壊れた電話ボックスへと急ぎ、皆を押し込んだ。
「受話器に一番近い人、ダイヤルして！62442！」
「魔法省へようこそ。お名前とご用件を仰ってください」
コイン返却口の受け皿に滑り出てきたバッジをハーマイオニーが全部すくい取って、ジニーの頭越しに無言で僕に渡した。
杖を登録しろという声に大声を出して返事する。
傷痕がまた疼いたのだ。
電話ボックスの床がガタガタ揺れたと思うと、ボックスのガラス窓越しに歩道が迫り上がりはじめた。
セストラルの姿も見えなくなり、頭上は闇に呑まれ、一行はガリガリという鈍い軋み音と共に魔法省のある深みへと沈んで行った。
僕はアトリウムで誰か待ち伏せしていないかと、ガラス窓越しに窺ったが、そこは完全に空っぽのようだった。
「魔法省でございます。本夕は御来省ありがとうございます」
電話ボックスのドアがパッと開いた。
アトリウムには、黄金の噴水が絶え間なく吹き上げる水音しかない。
僕は先頭に立って噴水を通り過ぎ、守衛室に向かったが、そこには誰もいない。
いないということは不吉な徴に違いないと思った。
エレベーターに向かう金色の門を潜りながら、ますます嫌な予感を募らせた。
エレベーターに乗り込み、九階を目指す。
「神秘部です」
取っ手のない黒い扉に向かった。
何ヶ月も夢に見たその場所に、僕はついにやってきた。
「行こう」
扉の方を向き、歩き出した…夢と同じように、扉がパッと開き、僕らは前進した。
そこは大きな円形の部屋だった。
床も天井も、何もかもが黒かった。
何の印もない、まったく同一の、取っ手のない黒い扉が、黒い壁一面に間隔を置いて並んでいる。
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夜彩(プロフ) - atheneさん» ご指摘ありがとうございます。私自身もおかしいなとは感じていたので…また何か誤字、脱字等ございましたらお気軽にお知らせ下さい (2022年7月27日 13時) (
レス) id: bd39633a4b (このIDを非表示/違反報告)
athene(プロフ) - クィレル先生は「クウィレル」ではなく「クィレル」です。とても面白いので、いつも楽しみにしています！二人の関係の切なさがなんともいえません！ (2022年6月13日 0時) (レス) @page26 id: e8c4b441c6 (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年3月30日 2時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - お久しぶりです泣 楽しみに待ってました泣 (2021年12月23日 22時) (レス) @page12 id: b1e8907435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜彩 | 作成日時：2021年8月4日 1時
