#49｢よ、よかった…｣ ページ2
｢改めて、初めまして。オレはフォーリアで唯一の導師を務める、メルスだ。よろしく｣
メルスが改めてAの前で自己紹介をし、律儀に頭を下げると、突然Aが指を指して叫んだ。
｢あーーーーっ！？｣
Aの声が教会中に大きく響いた。
集会室にまで届いたのか、集会室から田中くんとアルカが口々に叫びセドナ辺りに黙らされたのも分かった。
｢佐藤くんだ！！なんか見たことある顔だと思ってたけど…顔も体型も声もあの最初の小屋で見た子だ！！｣
名前も聞いていなかったあの少年。
Aは、佐藤くんと名付けていた。
メルスの容姿や声は、その少年とほぼ同じものだった。
｢…最初の小屋…？まさか…｣
メルスが真剣な顔で呟いたかと思うと、すぐに笑顔に戻った。
｢きっと、その人はオレじゃないよ。オレは昔ルミナス街に来たことはあったけど、その時は小屋なんて無かった。｣
ルミナス街。Aとアルカが最初に辿り着いた街だ。
華やかな街並みには不釣り合いな古めかしい小屋だが、メルスは本当に見覚えが無いのだろうか。
｢…まず、カースシックの治療について説明するね。｣
話をメルスに戻され、Aは頷く。
ある程度邪気耐性のある勇者のみが発症するカースシックの治療はメルスのみが可能だということは知っているだろうが、段階によってはメルスであっても治療不可能となる場合がある。
それは、症状が【ステージ4】まで達した時だ。
カースシックの症状は大きく５の段階に分かれている。
例えばステージ1や2は、魂石が邪気に侵された部分が小さく、少し体に不自由が出る(うまく動かない程度)、疲れやすいなどが主な症状だ。
ステージ3からだと自ら邪気を発し、魔物を近づけやすくする。
ステージ4では、少しずつ魂石にヒビが入りだすと共に、勇者が精神的崩壊を起こす。
ステージ5になれば、完全に穢れそのものと化す。
導師であっても、【ココロ】の穢れは取り除けないのだ。
｢幸い、君はステージ3…オレが取り除ける範囲内だ｣
｢よ、よかった…｣
Aは安堵に溜息をつく。
｢じゃあ、儀式を始めるから目を瞑って。｣
Aは、促されるままに目を瞑る。
メルスが詠唱すると、魂石が徐々に熱を持って光っていく感覚のがAには分かった。
身体や胸にあった重いものが、するすると解けていく。
暫く、Aはとても心地よい感覚に身を任せた。
｢終わったよ。もう目を開けて大丈夫｣
メルスの声を合図に目を開ると何だか視界が明るく感じた。
#50｢ゲルだから脈分かんないよ！｣→←#48｢へっへーん、私の25連勝！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蓬莱あむ（ほうらいあむ） | 作成日時：2017年8月11日 3時
