藍色の誘拐犯 2【神威】

___49話___ ページ17

□








ネットカフェで隠れるように生活する毎日。
｢慣れ｣というのは怖いもので、数ヶ月経てばそんな毎日が私の当たり前になる。



『お嬢ちゃん、いつまでここに住むつもりだ』

｢いいでしょ お金はちゃんと払ってるんだから｣



店主とも毎日顔を合すものでタメ口を使う仲になっている。神威さんにはずっと敬語しか使えなかったのに。
って、これはちょっと嫌味っぽくなったけど。



『ジャンクフードばっか食ってると体壊しちまうぜ』

｢分かってる｣



ひらひらと手を振りマスクをして またいつもの場所に向かう。あの場所に行けば、いつか会える気がして。



｢…ほんと何も変わらないなぁ、ここだけは｣



全ての始まりで、私の終わりになるはずだった場所。

街の風景は日数が経てばいくらでも変わってしまう。あんなビルあそこに無かったし、あそこの道は綺麗になったぁ…なんて見ながら、今日も来ない迎えを待ってる。



｢早く来ないと、街の風景変わりすぎて分かんなくなっちゃうよ。私の場所｣



誰にも届かない独り言を言いながら柵にもたれ掛かり
下を覗くと高さが分かって結構怖い。
こんな所からよく飛び降りたな…って自分に感心するし、どんだけ絶望してたんだよってあの時の自分を笑いたくもなる。

跡が残ったままの手首の傷跡も、今は見る度なんだか愛しく感じてる。




｢神威、さん…｣



名前を口にするだけでも恋しいの。ずっと私、ここで待ってるよ。どこかで生きてるって信じてる。いつか会えると それだけを信じて生きてるの。

どう言われようと、私は自分の力で生きてるんじゃない。確かに救われたんだ。
だから貴方が愛してくれたこの私で、一度しかないこの命(わたし)で、貴方の為に生きようと思うよ。








でもやっぱり私は、神様に嫌われてる。

ある日を境に、屋上の扉に鍵がかかるようになって、次の日もその次の日も、もう二度と開くことは無かった。多分管理人さんが変わって、壊れてた扉の鍵を新しく直したんだろう。

もうきっとあの人には会えない。
そう誰かに告げられてる気がした。








□

___50話___→←___48話___

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す