ねがお ページ8
明日も仕事。
彼女のスーツをこの間買ってやったので、それを家に置いて帰ったから着る物は大丈夫。
下着も、前に余計に持ってきたものを履いている。
部屋を見渡せば、彼女の私物が増えた。
殺風景な部屋が、彼女によって彩られるのが幸せだった。
なぜか彼女が気に入っている小鳥さん人形とバイキンダーフィギュアは玄関とサイドテーブルに丁寧に飾られている。
一人でこの家に帰った時、玄関で待ち構えるフィギュアたちに鬱々とするが、彼女と帰るとバイキンダーただいま、と話しかけている可愛い姿が見られるのでよしとする。
どうやって彼女をこの家に住まわせようかと考えながら、彼女の温もりを感じて酒も薬も飲んでいないのに夢も見ずに朝までぐっすり眠った。
「…やばい、A起きろ。A！」
時計は8：20を指していた。
彼女が家を出る時間は８：３０寝起きの悪い彼女があと１０分で家を出られるとは考えられない。
「んー…うらみちさん、まだねむいよう…」
「もう20分だぞ！」
時計を寝ぼけている彼女の目の前に突き出すとどんどん青ざめて飛び出すように洗面所へ向かった。
「ろーひよう…まはおこあえう…」
「怒られるだろうな。」
歯を磨きながら髪を梳かす彼女の隣で変なところで器用だなと思いながら歯ブラシに歯磨き粉を付ける。
「今日は車出してやるから、落ち着け」
「ほんと！？」
泡だらけの顔で俺を見つめる彼女が面白くて吹き出してしまう。
口の中の歯磨き粉が彼女に降りかかって2人で笑い転げた。
彼女との朝は騒がしいが、楽しくて幸せだ。
間一髪、彼女を会社まで送り届けてMHKへ向かう。
久しぶりに利用した駐車場。
広すぎてここで疲れ果てそうになる。
「おはざーっす、裏道さん、今日車で来たんすか？」
「まあ、たまにはな。」
「なんか、機嫌いいですね。」
熊谷の言葉に兎原が同調し、何があったんだと尋ねられて何食わぬ顔で答える。
「別に、彼女できたからかな」
「は…」
「な、な、な、なんすかその顔！」
「は？」
何故か顔を赤くしてわなわなと俺の顔を指さす兎原を睨む
「そんな優しい顔俺見たことないっすよ！」
優しい顔ってなんだよ
と思いながら緩んだ顔で楽屋へ向かう
終わり←あい
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作成日時：2021年10月1日 23時
