逃走 ページ28
Side.ショッピ
ガッッ
鈍い音が廊下に響き渡る。
ショッピの足の手前、スレスレを掠った刃は、床に浅い穴を開けていた。
顔を青くしたまま、ショッピはしにがみを見上げる。
「せ、んせ……」
恐怖で埋め尽くされた頭の中、僅かに残った平常心に任せて何とか声を出そうとした。
そんなショッピをしにがみはそっと見据える。
そして、
「……にげて」
瞬間、その場の空気が重くなっていくのをショッピは直感的に感じた。
そして、それと一緒に喉元に違和感を覚える。
呼吸が出来ない。
「……ぁっ」
決して死神が彼の首を絞めた訳ではない。
寧ろ、接触すらしていないのだ。
何故。
そんな言葉がショッピの思考を埋める。
「ショッピ君!!」
美術室から何かが飛び出して来た。
猿山だ。
その声と姿を認識し、ハッとショッピは我に返る。
逃げなあかん__。
対して死神は、突如として出てきた猿山に目を見張った。
ショッピはそのまましにがみから距離を取り深呼吸をする。
酸素が肺に戻ってくるのと同時に、近くにあった消化器を手に取る。そして、死神の脇に滑り込んだ。
ダンッ
プシュー
脚が床を蹴る音に続いて何かが噴射される響き、死神にそれが直撃する。
煙を叩くような挙動をしながら、しにがみが目を開ける。
ショッピの姿が死神の視界から完全に消えていた。
猿山もそれを見て安堵の息を吐きながらも、壁を通ってショッピの後を追う。
そこに残されていたのは、抜かれた鎌を握る豹変した死神の姿だけだった。
*****
目についた教室に飛び込む。
「…はぁ…はぁ」
肩で息をしながら額の汗を拭う。
この息の乱れや汗も、一種の興奮状態からくるものなのだろうか。
そんな事を考えながら、ショッピは背後を振り向く。すると、フヨフヨとした蒼白い物体が闇から姿を現した。
「ショッピ君!大丈夫!?」
「………ええ、何とか」
でも、と、目を伏せながらショッピは顔を顰めた。
「……元々、あんな先生なの?」
「……全然違います。確かに怒る時もありますが、基本、とても優しくて………」
ショッピの瞳が不安げに揺れる。
「一体何が……」
「………」
思わず、猿山はショッピの背中を擦ろうとする。が、その手は無情に彼の身体をすり抜けた。沈黙が続く教室の中、時計だけが無機質に針を進めていた。
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え??うせやろ??? (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……!?あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ただの黒砂糖 | 作成日時:2020年4月19日 13時