目覚め ページ5
見慣れた空間を見て、またかとため息をつく。そりゃ、目覚めたら…なんて夢みたいな話ある訳が無いのだ。
自分は永遠にこの空間から逃れられない
そんな考えが脳裏によぎり、息がつまる。
もう、この際死んでしまった方がマシなのではないのか。
……でも、だとしても、
「__」
終わる事の無い呪いの中で呟いた言葉は、誰にも届かず消えていった。
*****
Side.ショッピ
頬をかすめる冷たい風に、ショッピは薄らと目を開ける。起床時特有の浮游感に包まれながら起き上がると、すぐに手に違和感を感じた。
ある筈の無い砂の感覚。そして成人済みの男性にそぐわない小さな手。
「……は?」
思わぬ景色に驚き立ち上がると、やけに背中が重く感じる。
背後に移した視界に入るのはどこか既視感を感じる紫色のランドセル。よくよく見ると、これは小学生の頃使っていたものだ。
「なんやこれ…!?」
一気に押し寄せる大量の情報に混乱するが、一度深呼吸をして情報を整理する。
小さな体…
紫のランドセル……。
これらの状況から、ショッピは自身が小学生になっていることを理解する。
……まぁこれもどうせ例の悪夢だろう。
周りを見ると、端に生い茂る木々達や学校のような建物が目に入る。
木々達は運動場を囲むようにあちこちに生え、見覚えのある学校らしき建物は、外装だけでも大きいことが分かる。
学校を睨みながら小学生の頃の記憶を探ると、案外すんなりと答えが出る。
ここは零陀小学校。俺の母校だ。
今まで見てきた悪夢は、全て何もない真っ白な空間での出来事だった。
これが悪夢だとすれば、その中に建造物が出てくるのは初めての経験である。零陀小なのは、元同級生との飲み会の直後だからだろうか?
いずれにせよ、自身は今晩もあの手この手で痛めつけられるのだろう。
最初の頃は必死に夢から覚めようとしたが、それも無駄な足掻きだと分かった今は抵抗する気力も無い。どうぞ、煮るなり焼くなり好きにしてくれと、ショッピは力無くその場に座り込んだ。
それが、数十分前の出来事である。
「…何も起きん」
静まり返ったグラウンドの中心で、ショッピは呟く。かなりの時間が経ったが、一向に何も起きない。明らかに異常だ。今回はイレギュラーが多すぎやしないか。
刹那、ある一つの考えがショッピの頭を過る。
もしもだ、もしもこれがただの悪夢ではないのだとしたら……
「っ!」
背中に冷や汗が流れる感覚と共に、ショッピは走り出した。
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え??うせやろ??? (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……!?あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ただの黒砂糖 | 作成日時:2020年4月19日 13時