迷走 ページ33
Side:エーミール
まるで、赤子に話しかけるかのような、まるで、泣き叫ぶ幼子に笑いかけるかのようなその慈愛に満ちた声色に、心が解れていくのを感じる。
…ああ、そうだ。この人は教師なんだ。
そう思うと無性に泣いてしまいそうで、エーミールは口を堅く結んだ。
「……憑いとるんやないか」
暫くの沈黙の後、不意に奥から声が上がる。チーノが、沈黙の前から寸分変わらぬ格好で眼鏡を光らせていた。
「…憑いている」
誰にともなく、エーミールは呟く。この騒動の前のエーミールなら非現実的だと一蹴してしまいそうだが、たった数時間の経験が、その可能性を無きものとしていた。
「せや」と、チーノがエーミールを見やる。
「憑いてんねん、“悪いモン”が。よくあるやろ、映画とか小説とかで。あと、そういう類の奴に操られとるとか…勿論、仮説やけど」
「…あると思います」
ショッピが顔を上げる。
「状況も状況ですし…その“悪いモン”が何なのかは検討がつきませんが、それなら先生の様子の変化にも納得がいきます」
エーミールの脳裏に、変わり果てたしにがみの姿が蘇る。殺意を孕んだ瞳、だらりと下がった腕、その先に光る鎌…。思い出しただけで鳥肌が立つ。
でも、それがしにがみである訳が無い。
「…そうですよ」
考えるよりも先に、口が動いていた。
「きっとそうですよ…！そうでなきゃ、あの人が…先生があんなことするなんて考えられない！」
ただの望みでしかない。そこに根拠も、理論も、証言も、証拠になるものなんて何も無い。だというのに、絶対そうだと言い切れる“何か”がある。三人は顔を見合わせて強く頷いた。
「絶対に先生を元に戻しましょう！」
「このまま何もせず帰ったら、更に寝付きも悪くなりそうですし」
「そうと決まれば、ほな行くか！」
チーノの言葉に、三人は一歩足を踏み出した＿＿。
「……えっと…どこに？」
ピタリ。三人の動きが止まる。言葉の主である猿山は「空気ぶち壊しで悪いんだけどさ…」と、居心地悪そうに口籠もる。
「そりゃあ、まあ…ねえ？」
チーノがショッピに振り返る。
「いや、あの…ねえ？」
ショッピがエーミールを見やる。
「えっと…え、あれ？私？」
ショッピとチーノが強く頷く。マズい、逃げ場が無い。エーミールは「うへぇ…」と言葉にならない声を洩らした。
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (
レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え？？うせやろ？？？ (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……！？あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ただの黒砂糖 | 作成日時：2020年4月19日 13時
