正体 ページ11
Side.ショッピ
コツ、コツ、
大きくなっていく足音を耳に挟みながら、ショッピはこの現状の打開策を考えていた。
しかし、こんな状況の中まともに頭は働かず、結局このまま耐え凌ぐという結論に至った。
隣をふと見ると、エーミールが体を震わせながら口を手で塞いでいるのが目に入った。
声を出さぬよう、そうしているのなら納得出来るが、何やら様子がおかしい。
「………どうしました?」
囁き声で問いかけると、エーミールは何かを伝えるように目線を動かす。
しかし、それだけでは伝わりっこない。
それを見かねたショッピは音を出さないよう注意しつつ、ランドセルから鉛筆とメモ帳を取り出し、それらをエーミールに渡す。
すると、エーミールは左手で口を抑えながらサラサラとメモ帳の1ページに文字を書き、それをショッピ返した。
メモ帳を受け取り開かれたページを見ると……
(くしゃみでそう)
うせやろ。
「エミさん耐えてください。本当に。お願いします」
先程と同じくらいの声量でそう伝えるが、エーミールはフルフルと首を振る。いや「無理」なんて言われても俺どうしようもないっす。というか俺も地味にくしゃみしたくなってきたどうしよ。
ショッピがそんな事を思っていると、二人のやり取りを見ていたチーノがチラッとメモ帳を覗き込む。すると案の定、彼も目線でエーミールに訴えかけた。
本人はというと、いよいよ我慢の限界なのだろうか。体全体をぷるぷると震わせて必死に堪えている様子だった。
「__ヘクシュッ!」
当然、その我慢は限界を超える。
慌ててショッピがエーミールの口を塞ぐが、時すでに遅し。
足音が止み、そして再び鳴り初める。しかも、どんどんこちらへ向かっているのか、次第に音は大きくなっていく。
三人共息を殺して隠れるが、大して意味は無いだろう。近づいてくる人影に、ショッピは目を瞑った。
そして、遂に懐中電灯の光がショッピ達を捉える。
あ、終わった。
直感的に三人はそう思う。
しかし、その絶望はすぐに衝撃へと変わった。
「あれ、そこで何してるの?」
女性のような可愛らしさと、男児のような幼さが残った高い声。
………そして、聞いた事のある懐かしい声。
ショッピが薄っすら目を開くと、そこには1人の小柄な男性が懐中電灯を持って立っていた。
ショートボブの紫色の髪とそれと同じような色のカーディガンを着た彼の姿を見て、チーノが口を開く。
「しにがみ先生……?」
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楼(プロフ) - ただの黒砂糖さん» おめでとうございます!! (2020年7月18日 23時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 10000hit………え??うせやろ??? (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 楼さん» ちょっとヒント与えすぎたかなHA☆HA☆HA……コメントありがとうございます(賢者タイム) (2020年7月18日 23時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
楼(プロフ) - sn君よ…君が鬼なったこともお兄ちゃんが誰なのかも丸わかりだ (2020年7月18日 20時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
ただの黒砂糖 - 114514さん» 読まれていた…だと……!?あ、コメントありがとうございます。 (2020年7月3日 18時) (レス) id: 93e33a038d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ただの黒砂糖 | 作成日時:2020年4月19日 13時