| ページ3
「じゃあ、もっとさ…」
そう言って、彼女の空いた手を絡めて恋人繋ぎをする。
彼女は急なことでびっくりしたのか俺の顔を見つめて固まっている。
そのまま、Aに近づいて耳元で囁く。
「俺と楽しいことしよ?」
耳元で囁かれた吐息のせいかAがビクッと反応する。
あぁ…、そんな反応されたら我慢できなくなっちゃうよ。
『て、てつやさん?』
彼女が困惑したような声色を出すので耳元からそっと離れてAを見つめて、ん?と言うと
『その、近い…です。』
顔を赤らめて俯く彼女。
可愛い…意地悪したくなっちゃう。
今だ絡められた手。そして反対の手を彼女の頬をそっとなぞる。
「ねぇ、こっち向いて?
その可愛い顔、俺だけに見せて…。」
俺の名前を弱々しく呼ぶ彼女。
俺もそれに応えるように彼女の名前を呼んだ。
「A。」
ゆっくりとAの唇を指の腹でなぞる。
そしてそこに重ね合わせるように近づいた。
押し当てられる、柔らかい感触。
温かい体温…今までキスに多く感じなかった。
そして、少し固い感触もする。目を開けると彼女の唇だと思っていたものが彼女の手の甲だった。
「はぁぁぁぁ!?」
『ご、ごめんなさい。』
「え、いや…えぇぇぇえ…」
俺の感情が追いついていないと、彼女は今日は帰ります!とバタバタと逃げるように去っていった。
一人残された俺は虚しく彼女が先程までいたソファで寝転び泣いた。
144人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2021年2月22日 8時