金木犀が香る頃に【我妻善逸】 (ページ6)

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私の発した声はそこまで大きくなかったはずなのに彼の耳には届いた。

この人…めちゃくちゃ耳良くない？

だってそんな至近距離で呟いてないよ？超能力？超人？何者？

『あっ、あの』

私の声に反応して振り向いた瞬間、突如風が吹いた

風になびく金色の髪と鮮烈な金木犀の香りが、そこのシーンだけ切り取られるかのように鮮明に映った

『どうして…聞こえたんですか？』

「え？」

咄嗟に出た言葉は、金木犀の感想じゃなくて彼への質問

こんなこと聞くはずじゃなかったのに、いつの間にかこの言葉が口から出ていたんだ

「俺、人一倍耳が良いみたいで。よく不思議がられるんですけどね…」

彼は少し苦笑しつつもそう答えた

え、なにそれすごくない？超能力者じゃん

『…すごいですね』

ここでほかの人と話すなんて思ってもなかったし

そもそも初対面だし、話すつもりなんてなかった

だけど不思議だね

「えへへ、そうですか？」

彼といると＿＿＿なんだか気持ちが落ち着くんだ

初めて出会って、今話したばかりなのに

前から出会っていたような、知っていたような

そんな錯覚に陥るんだ