もう1人の伝説 (ページ16)

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ホテルページ16

橋本side

時刻は11時を回った。
…A、来てない。
さっきから何回もエントランスをチラチラ見てるけど、人が来る気配すらもない。
しーちゃんには大丈夫って強がっちゃったし…
あぁ…ほんと、悪い癖(・・・)。

そんなことを考えていたからだろうか。
私は、人の気配に気づいていないようだった。

『なーなみっ』

「うわぁ？！」

びっくりしたぁ…
驚いて声の主を見上げる。

『そんなに驚かなくても…w』

私の顔を見つめ苦笑するA。

「急に名前呼ばれて驚かない方が無理だって！」

『ごめんごめん。待っててくれて、ありがと。遅くなってごめんね。』

「あ、ううん…」

Aから目線を外して答える。
いつも、こんなに遅いのかな。
でも…もしかして芸能界ではこのくらいの遅さが当たり前なのかな…？

『奈々未？』

「あ、あのさ…いつもこのくらい遅いの？」

『え？』

「仕事の時間。いつも11時とかに帰るの？」

『あぁ…』

Aは肩を竦めて困ったように笑った。

『厳密に言うと、仕事時間は労働基準法で22時までなんだけど…
私の場合有難いことに代替が出来ないから、その場合は法に該当しないんだ。
だから、子役時期も帰るのが11時とかは、普通にあったよ。』

「そ、そんな基準があるんだ…初めて知った。」

『まぁ…奈々未は該当無しだから。心配しなくても大丈夫。
スタッフさんからも、説明されると思うしね。』

「そうなんだ…」

Aは軽く笑って

『私、チェックインだけしてきちゃうね。待ってて。』

と言ってスタッフさんの所へ歩いていった。
…ほんとに、業界人だったんだな。
Aの後ろ姿を眺めながらふと思う。
名前で呼んで、のお願いの時は至って普通の高校2年生に見えたけど…
スタッフさんと話しているAは明らかに普通の高校2年生じゃなかった。

……Aは、置いていっちゃうのかな。
乃木坂46に入って、どうしたかったんだろう。