もう1人の伝説 (ページ11)

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【稲垣さん、順風満帆な芸能生活を捨てるつもりなんですか？】
【急に芸能界を去られましたけど、迷惑の方は考慮しなかったんですか？】
【答えてください稲垣さん！】
【逃げているのと同じですよ、稲垣さん。】

たくさんの質問の数。私は怖くなって身を縮めた。

『今はプライベートです。質問は受け付けません。稲垣Aに用事がある場合は、事務所の方を通してください。』

【やっぱり逃げるんですか？】

『逃げも隠れもしてません。事務所を通してさえくれれば、いくらでも話します。今はプライベートなので。それでは、失礼します。』

堂々とAは言い放って、私の手を掴み、バスに乗り込む。
そして窓際に座り思い切りカーテンを閉めた。
運転手さんも汲み取ってくれたらしく、直ぐに発車してくれた。
少し走り、Aがカーテンを開ける。

『ごめんね、奈々未。怖かったよね。』

「うん、正直…Aは？」

『こういうの、覚悟して乃木坂受けたから。怖くないよ。』

そう言って窓に頬杖を着くAは、なーちゃんのような高校2年生には見えなくて。
Aの目はどこも見ていないようだけど、遠いところを眺めているようで。
私はAからそっと目線を外した。