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「……ん……」
「春千夜さん……苦しいですか?汗拭きますね」
涙が枯渇する程に泣いて、願うしか出来なかった私は手術中の赤いランプが消えて先生が出てきた瞬間に今にも消えてしまうのではないかと思うくらいの声で春千夜さんは……?と聞くと
すごく穏やかな顔で、私を安心させるように成功したと一命は取り留めたとそう告げてくれた。
膝から崩れ落ちた経験は後にも先にもきっとこれが最後だ。
枯渇している筈の涙がまた溢れてきて私は安堵の感情で満たされていく。
「お嬢さん、ほら、大丈夫だっただろ?」
「はい…!あのっ、私のわがまま……聞いてくださってありがとうございました…!」
「んじゃ、俺のワガママも聞いてくれる?」
「九井、Aは絶対売らねぇけど?」
黒髪の彼____元い九井と呼ばれる彼は、そんな事したらアンタに天に召されるだろと言ってまた私に視線を向けた。
「このアホ野郎の入院中の世話してくんね?」
「え?は、はい!是非……!も、勿論……!」
願ってもないことで、食いつくように返事をすると九井さんは眉を寄せながら笑って、蘭くんに大変だね?お兄チャン?と言うと去っていってしまった。
世話係は私なのに何故蘭くんが大変なのかと疑問に思っていると、蘭くんは何かを思い出したように電話をかけた。
「お、竜胆。悪ぃ忘れてたわ、お前のこと生きてる?」
「兄貴……ひで……!!!A……どこ……!」
「あー、ハイハイ。元気だなぁお前。Aなら____代わる?A」
そう言われて代わると大きな声で私の名前を呼ぶ竜胆くん。
「Aー!!!!!!俺マジ頑張った、すげぇ頑張ったから帰ったら抱きしめていいよな?」
「え?う、うん、それはいいよ?」
「……兄貴から、少し聞いてるけどアイツ、大丈夫か」
「竜胆くん、心配してくれてるの?」
「心配なんてしてねぇし!つか、くたばればAに近づかなくなるし俺としてはいいけど。……Aが、悲しくなるだろ」
素直じゃない人。そう思いながらも大丈夫だったことも、これからお世話係をする事も全部伝えると
竜胆くんは悲痛な叫びのようなものを上げていて、それが端末越しに聞こえていたのか蘭くんが私から強制的に取り上げた。
「竜胆、気持ちは分かっけど我慢しろ」
竜胆くんの叫び声しか聞こえないけれど、蘭くんは私が猫でも飼うような言い方で
きちんと世話すんだぞ?と私に言いながら頭を数回撫でると
竜胆うるせぇから迎えに行くわ、そう言って行ってしまったから
1人になった私は、春千夜さんの病室に足を急がせた。
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時