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「A手伝う」
「だめです、春千夜さんはお客様ですから」
「よくね?毎日いるんだし」
そう言って料理をしている私を後ろから抱きしめて頬を擦り寄せて来る春千夜さん。
擽ったくて、心が忙しなく動いて彼にこの音が聞こえてしまわないか心配になってしまう。
私の心臓の音は私の脳内で響いて何倍もうるさく聞こえるからだ。
「兄貴、俺もう我慢できねぇんだけど。邪魔していいよな?な?」
「なぁ、竜胆もし____」
いつもなら直ぐに引き剥がしに来る竜胆くんも蘭くんも来ないのがまた、私の時間感覚を麻痺させていた。
火を使っていて危ないと竜胆くんのときと同じように注意しても春千夜さんは全く聞く耳を持ってくれない。
それ所か少し強く抱きしめて私の耳元で囁くのだ。
「は____?いや、冗談だろ兄貴」
「冗談でんなこと言わねぇーから困ってんじゃん」
____沢山待てしたご褒美貰ったっていいだろ?
つくづく春千夜さんはずるい人。
私が貴方に甘いことを知ってて、私を困らせるのだから。
ブ-ッブ-ッ
「……悪ぃ、電話していいか?」
「は、はい大丈夫ですよ?」
スマホの画面を見ると途端に見たことの無い顔をする春千夜さん。
歓喜しているようなそんな、口元の緩みを隠しきれないような。
今まで一緒にいる時にこんな顔をさせた人はいただろうか。
もしかして、私が忘れているだけだろうか。
何にせよ、心が黒いモヤモヤしたもので覆われる感覚がした。
____羨ましい
私に見せない、春千夜さんの素に近い様な顔。
「仰せのままに、ボス」
気になってはいけない。
足を踏み込んではいけないと頭では理解できる。
でも心は?
出来なかった。電話の主が誰なのか気になって仕方がなかった。
「なぁ、ご褒美に俺の頭なでなでとかどーよ?マイキー?」
心からの緩んだ顔をしている春千夜さん。
なんだ、居るんじゃない。私以外に心の拠り所がと、勝手に落ち込んでしまう。
春千夜さんは何も悪くない。
勝手に自分が少しでも心の拠り所になっているのかとか、私より過ごしている年数も密度もある人が既に居たのに
マイキーさんは、どんな人だろうか。
金髪美女だろうか。
きっと春千夜さんの隣を歩いていても恥ずかしくない人なんだろう。
ガタッともの音を立ててしまうと、春千夜さんの鋭い目が私を捕える。
怒られてしまう、そう思って目を瞑ると
「とりあえず今から片付けとく」
春千夜さんは私の頭を、その暖かい手で撫でた。
とても優しい顔で、まるで猫に触るように。
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時