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プールで少し仲良くなったのか、春千夜さんが我が家にお泊まりをしに来ることが増えました。
主に蘭くんのゲーム相手をしているけれど、それでも家に好きな人の気配がするというのはとても温かい気持ちになる。
「寝みぃ…」
「昨日も遅くまでゲームしてるからですよ?」
「文句ならお前の兄貴に言えっての」
眠い目を擦りながらそう言って、私の出勤時間に合わせて起床すると一緒に隣を歩いて送ってくれる春千夜さん。
最近はこの時間も宝物の時間だ。
夕方だけの時間だったのが、朝もこうして一緒に居ることが出るのだから。
憂鬱で行きたくないと思う事が多い会社の出勤がこんなにも楽しいと思ってしまうのだから
恋は毒にも薬にもなるとテレビの中のタレントさんが言っていたことはあながち間違いでは無いと思った。
「私もゲームしたいです」
「ダメ、お前雑魚だから、絶対」
「ひ、酷い…」
「Aは俺の応援だけしてりゃ良いだろ」
そう言いながら私の頭を撫でてくれる春千夜さんの力は優しい。
この撫方が私にはすごく心地がいい。
兄たちとはまた違った、心地の良さがある。
「電車?徒歩で着くだろ」
「今日は、資料を受け取ってからの出勤なので、A社に伺わなければなくて…」
春千夜さんに送ってくれたお礼を言ってまた今度と挨拶をしようとすると
春千夜さんは、私の腕を引っ張って改札を抜けようとする私を引き止めた。
すごく、不機嫌な顔で。
「誰が、お前一人で電車乗せるなんて言ったよ」
「え?」
「お前、自分が可愛いの自覚しろよ」
「…え?!あ、な、何言って…!」
私がしどろもどろになっているうちに春千夜さんは改札を通ってしまった。
春千夜さんが私を引き止めた上に掻き乱したのに、本人はなんとも思ってないような涼しい顔で早く来いと私を呼ぶ。
そんな春千夜さんがずるい。
春千夜さんにとって何気ない一言でも、私にとっては私の脳が過敏に反応するほどの一言であるのに。
____まもなく1番線に列車が到着いたします____
「絶対、俺から離れんなよ。離れたら即スクラップ決定」
「は、はい」
「…ほら」
「え?」
急に春千夜さんが小指を差し出してくるからなんだろうと、顔を凝視すると
春千夜さんは少し顔を顰めながら、頬を赤く染めそっぽを向いた。
「こういう時、すんだろ。ゆびきり」
「ふふっ…ゆびきりしましょうか」
「今A、馬鹿にしやがった。スクラップ、すぐスクラップ」
こういう所も好きだなぁと思うと私の口角はいつまでも緩んでしまうのだけども
春千夜さんはそんな私の頭を軽く小突くのだった
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時