兄がカリスマシスコンなせいで彼氏ができません！【三途春千夜】

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｢お兄さんー！かっこいいですね！｣

｢ｯﾁ…群がってくんなブサイク｣

｢えー！酷ぉいー！｣



私はこの光景を今日は幾度となく見ている。
やっと春千夜さんの水着姿に目と脳が慣れてきたというのに、女の子に囲まれてしまっているのだ。


女の子の気持ちは理解できなくもない。何故なら春千夜さんはかっこいいからだ。
顔だけではなくて、優しいところとか意地悪なところも全てが。


だがしかし、私があの子達の立場の人間なら春千夜さんに声などかけることは出来ないだろう。

そんな勇気も強い心も何も、自分には無いからだ。




だから、今もこうして＿＿＿＿






周りの女の子に負けて、腕を組んでいるところも話しているところも


ただ私はそれを傍観していることしか出来ないのだろう。


針をチクチク刺されているみたいに、心臓が痛い。






｢ﾃﾒｪ、汚ぇ手で触んな｣

｢お兄さんが遊んでくれるな＿＿＿＿｣

｢腕折られるのと、今ここで二度と見られねぇ様な顔になるまで殴られんの、どっちがいい？｣





そう春千夜さんが言った瞬間、女の子は震えながら手を離して他の女の子も春千夜さんから距離を置くように、逃げるように去っていった。

何故なら、春千夜さんの顔が本気で殴る人の顔をしていたからだろう。
そして、殴る時のスピードで握りこぶしを彼女の顔のスレスレで寸止めしたからだろう。





｢A｣

｢は、は、春千夜さ…！？｣



春千夜さんは女の子が居なくなると私を思い切り強く抱き締めた。

肌と肌が密着して春千夜さんの体温が直に伝わってくるのが、私の羞恥心を掻き立てていく。

頭の先から爪先までも全部が赤くなっているのが私が私を見えなくてもハッキリ分かるくらいに、私の体温は上がりきっていた。




｢Aで俺を消毒させろ｣

｢消毒に、なりますか…？｣

｢ったりめーじゃん。あー、マジで気持ち悪くてスクラップにしてやろうと思った｣




春千夜さんは、男とか女とか関係の無い人だ。

私も出会った時、躊躇も何も無く銃口を突きつけられたのだから。

相当、ナンパされることは春千夜さんにとって害悪判定なのだろう。




｢私は、触っても、いいのですか…？｣




私はズルい女だ。

抱きしめてもらっている時点で答えは分かりきっているのに

それでも私は春千夜さんの口から直接聞きたいと思ってしまうのだから。

少しの希望を私の頭と心は実感したいのだから。




｢マツゲチャン？俺らに女押付けて…水着姿のAに触んなっつーの。お前こそ再起不能にされてぇの？｣

｢…ﾁｯ。もう戻ってきやがった。三つ編み野郎｣

｢竜胆にぜーんぶ押し付けてきた｣

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