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「本当にこれで出るの…?」
女子更衣室、私は1人ブツブツ呟きながらロッカーを閉めていた。
傍から見れば私は怪しさ満載の女だろう。
私よりも早く着替えを済ませた女の子達は皆楽しそうに更衣室の向こうのプールに一直線に向かっていたのだから。
それに比べて私は、未だに更衣室から出る勇気が無い。
1ミリも1ミクロンも、そんなものを持ち合わせていない。
結局私は、春千夜さんが選んできてくれたものをさも私が選びましたと言ってそれを購入。
兄2人は私が気に入ったのならいい。そう言ってくれた。
兄2人に春千夜さんが選んだとバレれば選びに来たこともバレてしまうしそもそも却下されるから私が選んだ。という体にしたのだ。
実際春千夜さんの選んでくれたワンピースの形をした水着は可愛いかった。
スカートが短いけど。
「そろそろ出ないと…怒られるよね…」
更衣室に入ってから30分は経過している。
さすがにこれ以上は兄はともかく、春千夜さんは怒りそうな気がして大きく深呼吸をして覚悟を決めて
プールへと足を進めた。
「…おっせーよ」
「…あ、う、春…千夜さ…ん?」
「俺以外の誰に見えんの?」
高校時代もさほど気にしたことがなかった。
男性の体なんて、小学生からずっと上半身は出ているものだと思っていて意識するとかそんなことは全くなかったのに
どうしても春千夜さんの水着姿だけは直視ができない。
どこを見ていいのか目線に困ってしまう。
「…下、向いてたらAの顔見えねぇんだけど?」
今は上を向けない。
なぜなら私の顔が熱くて赤いのがわかっているから。
そんな顔を見られたら、私の気持ちも何もかもが春千夜さんに伝わってしまう。
そう思うと首を横に振ることしか出来なかった。
そんな私の態度が嫌だったのか、春千夜さんは私の顔を掬うように優しく持ち上げる。
少し泳いだのか冷たい手が私の頬に触れて、冷んやりしているのが私の熱を吸い取ってくれるみたいだ。
「ん、可愛い」
てっきり顔が赤いとからかわれると思っていたのに
急にそう言われて、折角吸われそうになった私の熱がまた戻ってきてしまった。
「み、水着!可愛いです、よね」
「水着じゃなくて、俺の選んだ水着着てるAの事なんだけど?」
ここは室内で、室外プールに出ていないのに
暑くて仕方がない。これも全部春千夜さんのせいだ。
春千夜さんのその舌なめずりしながら上がる口角も何もかもが格好良いから。
「あ、え、っと、竜胆くんたち、いません、ね?」
「あー、女にナンパされて無理矢理連れていかれてた」
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時