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春千夜さんは計20時間、兄のゲームに付き合いきってこのままこの家にいたら生きた心地しねぇ。とそう言って帰ってしまった。
あまりにもフラフラしている春千夜さんを私は放って置ける訳もなく、家まで送りたいと名乗り出たのが良くなかった。
ダメだと即答されてしまったからだ。
名前を教えてもらったから調子に乗ってしまっていたのだ私は。
踏み込んでいいスペースと、悪いスペースが人間には必ずしもあるのにも関わらず、私は踏んでは行けない方を選んでしまったのだから。
最寄り駅までと言えば、断られなかったかもしれないのに。
結局一番快眠していた竜胆くんがバイクで送ってくれることになってしまって
指切りをして、無事に送り届けるように伝えると複雑な顔をして苦虫を噛み潰したように承諾してくれた。
「…ご飯の買い物に集中しなきゃ…」
「ハンバーグ?」
「っき…っんんんん!」
「何叫ぼうとしてんだアホ女」
口を塞ぎつつ、私の顔を後ろに倒す春千夜さん。
驚くに決まっている。
数時間前に家に居た人で、私の心の中を満たしている人に声をかけられたのだか
ら。
____この状況が理解できない。
竜胆くんが家に帰ってからも数時間しか経っていないのに、どうしてここにいるのだろうか。
「んだよ、その顔。俺に会えて嬉しくねぇわけ?」
その不機嫌な顔ですら私にはかっこよく見えてしまう。
怖い、なんて微塵も思わずに。
重症なのかもしれない、恋の病というものは。
こうも私の眼を変えてしまうものなのだろうか。
「会いたかったです…!」
「ん」
「春千夜さんは、その、会い、たかったですか?」
「A態々帰ってからここにいるんだから、分かんだろ」
春千夜さんはこの時、私が意地悪をしたと思ったらしい。
でも、私にはそんなつもりは無い。
春千夜さんの口から、会いたかったと聞きたかったのだ。
だから、私は
「きちんと言ってくれないと、わ、かりません」
気づけばそう口にしていて、春千夜さんを困らせてしまった。
これ以上、嫌われたくは無いのに、私の口は止まることを知らないみたいにそう言っていたのだ。
「…チッ…あー、クソ。1回しか言わねぇから。聞き取らなかったらスクラップ。今すぐスクラップ。いいな?」
「は、はい…!」
しかし、そんな私の不安とは裏腹に春千夜さんは頭を乱暴に掻きながら
「…会いたかった」
そう言ってくれて、言わせたのは私なのに胸が高鳴って顔に熱が集まる。
言葉が詰まる位の幸せな気分が私を支配するのだった。
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時