23 Noside ページ23
彼は眺めていた。
あの日、彼が気にかけている、一方的な恋心を育んでいる彼女と恋人だと勘違いをされて貰ったクマのキーホルダーを。
優しい表情で、愛おしそうに見つめる彼に
彼の同僚は少し顔を歪ませながら引き気味に、遠巻きに見ている。
そんな中、ズカズカと音を立てながら彼、三途春千夜に近づいてくる一人の男。
「おい、お前……抜けがけしてねぇよな」
「は?」
「しらばっくれんな、俺は見た。そのクマを……Aも持ってるところを!!!!」
あまりに近い顔に、三途は嫌な表情を浮かべるも、目の前の妹を溺愛しすぎている彼はお構い無しに眉間にシワを寄せながら近づいてくるのが鬱陶しいと感じている彼は
このシスコン兄、灰谷竜胆が文句を言い飽きるか、自分の無視で諦めるまで反応するのをやめようとクマのキーホルダーを大切に自身の胸ポケットにしまう。
「おい!無視すんな!も、も、もしかして…お前ら…付き合ってねぇよな!?」
「……さぁな」
無視するつもりが、何となくこの男にマウントを取りたくなってしまった彼は
口角をニヤッと上げながら、まるで悪巧みをするような表情で意味深な3文字で返事をすると
この兄は____
「お前のこと、弟なんて呼ばねぇし!呼びたくねぇ!早く別れやがれ、このイカレピンク野郎…!」
____泣いていた。
泣くとは思わなかった彼は、いつもは抱かない、可哀想だという感情を抱いてしまう。
特に何をする訳でもないが、"まだ"という枕詞をつけて付き合ってねぇし、誰がテメェを兄って呼ぶかよと言うと
泣いていた男の顔がみるみるうちに晴れていって
その顔が、目の前の男の、自分が好意を抱いている女、灰谷Aに似ていて兄妹なのが気に食わないと思うのと同時に
彼女のことばかりが頭の中を埋めたのだ。
恋人だと勘違いされた時の可愛らしい焦った顔も
自分がカレーを差し出した時の目を瞑りながら真っ赤にして首を振って恥ずかしいですと言ったその顔も
全部が三途の心も思考も狂わせていた。
「あーでも、俺、割と本気で好きになっちゃったんで、よろしく兄ちゃん?」
「諦めろ、俺らの天使、エンジェル、女神に近づくな、穢すな!それと兄ちゃんって呼ぶんじゃねぇ!鳥肌立つわ!」
「全部無理、俺のヤクになっちゃってるから、Aチャンは」
「表出ろ……イカレピンク野郎…!」
「あ?上等だ、てめぇのクラゲ無くしてやるよ」
本気で誰かに心酔したり感情を動かされたことなど、佐野万次郎という自分のボスだけだった彼の世界にいつの間にか入ってた彼女の存在が
心地よいものだと感じるほど。
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時