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「よ」
「三途さん…!」
帰宅を共にしていることを兄たちにバレてしまった事により、もうこの時間は無くなってしまうのかと勝手に落ち込んでしまっていたのだが、いつも通り定時に会社から退勤をすると
いつもの場所に変わること無く、ピンクの髪がトレードマークの彼がつまらなさそうにスマホを弄りながら立っていた。
兄の、特に竜胆くんの警戒心バロメーターはきっとテッペンになっているはずなのにどうやって潜り抜けてきたのか気になって仕方がないけれど
それよりも、目の前に三途さんがいることが嬉しくて駆け寄ってしまう。
「…犬みてぇ」
「ペットショップとかに、いると思いますよ?」
「馬鹿、見たい。の方の見てぇじゃねぇよ。Aが犬みたいだっつってんの」
何処がでしょう?と質問するよりも前に三途さんは私からしっぽが見えると言った。
生物学上、人間なんですが。と思いながら自分の背中から太ももの辺りを優しくさすってみてもしっぽなんてものはなく、その行動を見た三途さんは満足しているのか笑って私の頭を優しく撫でた。
「人間じゃないと困ります」
「あ?なんで」
「三途さんと、お話できません」
「……あっそ」
そういえば兄の包囲網をどう潜り抜けてきたのかを三途さんに尋ねると、三途さんはにっこり笑って無理矢理来たと答えた。
その笑顔も綺麗だと思わず見とれてしまう。
私があまりにもずっと見ていると、三途さんは目を逸らして私から距離をとる。
____耳を少し赤くしながら。
それを見逃していたら私は嫌われてしまったのかと悲しいという感情で頭が支配されていただろう。
だけど、私は見てしまったから照れ隠しだということが分かってしまって
三途さんを可愛い生き物だと認識してしまう。
「ふふ」
「何笑ってんだ、スクラップにすんぞ」
そう言って私を小突いてくるその力は優しい。彼の気遣いが伝わってくる。
一緒に帰りましょうと提案すると、仕方ねぇなと言って車道側を歩いてくれる彼にドクンと心臓が高鳴ってしまう。
「ふふ」
「今度は何だよ」
「三途さんとまた帰れると思ってなかったので…嬉しいです」
「それ、あの兄弟に聞かせてぇー」
「私じゃなくて、三途さんが怒られてしまいます……」
そんな未来を想像しながら歩くこの時間がやっぱり好きで
兄達に怒られるとはわかっているけれど、それでもこの時間が沢山続いて欲しいと沢山願いながら私はまたいつものように三途さんの隣を歩いた。
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マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時