11 ページ11
心に雨雲がかかったみたいな感覚が初めてで苦しい。
三途さんのことばかり考えてしまう。
こんな気持ちは初めてだった。
誰かのことで、こんなに心が埋まってしまうのが。
三途さんで、頭の中を埋め尽くされるような、そんな感覚がするのは。
私が彼のあの冷たい目に悲しいと思っている理由なんてものは分かっているのに。
「A先輩?大丈夫ですか?」
「……え?あ、は、花垣さん…!すみません、何か御用でしたか?」
「部長からこの資料をまとめて欲しいと…でも、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
____三途さんに嫌われたくない。
今日は、終業時間に三途さんは果たして居てくれるのだろうか。
この間、あんな目で見られるくらいだから嫌われているかもしれない。
三途さん相手だとどうしてこうも上手くいかないのだろうか。
平手打ちもしてしまっているし、謝ろうとしたつもりが頬を触っていたり
人付き合いが少ない私でも、三途さんとの関わり方が失敗しているということは理解出来る。
「よ」
期待していなかった。
いや、期待なんて絶対してはいけないと、自分に言い聞かせていた。
「あ……」
「げ。っ…何泣いてんだよ」
「あ、え……何、ででしょうか…ね…っ」
「……めんどくせぇ女」
そう言いながら彼は、ワイシャツの裾で少し乱暴に涙を拭いてくれた。
泣いている時点で気にすることでは無いけれど、私が朝必死に未だに慣れないメイクがヨレるほどに。
なんの関係でもない、名もない関係なのに三途さんは、そんな女の涙を拭いてくれる。
「Aのソレ、どーやったら止まんの?」
「すみませっ……」
中々泣きやめない私にイライラしているのか貧乏ゆすりをして眉間に皺を寄せている三途さん。
折角来てくれたのに、また嫌われると思って必死に止めようと努力をしているのに中々止まってくれないソレに私も困ってしまっていると
「女の涙の止め方とか知らねぇんだけど」
そう言って三途さんは私を引き寄せて、力強くでも、痛くない力加減で抱きしめた。
何が起こっているのか分からなくて頭の中がクエスチョンマークに染まってしまう。
こんなに兄以外と密着したことなんてなくて焦っているのか、どうしていいのか分からない困惑なのか
心臓が1回1回大きな音を立ててうるさい。
「んだよ、簡単に泣きやみやがって」
「お、驚いてしまって…」
「あのクソ兄弟で慣れてんだろ?」
いえ、三途さん。
兄にされるのと三途さんにされるのでは全く違います。
642人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - もむさん» ✉️。この作品凄く面白いです! (1月14日 11時) (レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - じろにゃん★さん» ありがとうございますー!!!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!! (1月10日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - うさこさん» あぁぁぁぁぁ……!ありがとうございます!!そんな!嬉しすぎる……!本当にありがとうございます!お返事遅くなってしまいすみませんでした……!!!続き頑張ります!!これからもよろしくお願いします!!! (1月10日 21時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
じろにゃん★ - 続きを楽しみにしてます! (1月8日 16時) (レス) id: 2ad09e2f31 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - 完璧すぎる…(;;)続き待ってます(´;ω;`)!! (1月5日 22時) (レス) @page48 id: d68f8df98a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もむ | 作成日時:2023年10月24日 13時