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「んじゃ、マイキーに呼ばれっから行ってくる」
春千夜さんはそう言って玄関で靴を履く。
正直、そのマイキーさん、という人のところには行って欲しくないのが本音だ。
怖いんだ、彼がまた大怪我を負ってしまうのが。
もうあんな気持ちになりたくない。
失いたくない。
しかし、春千夜さんはマイキーさんという人を凄く好いているのが電話をしている時の顔で分かるから止めたくても止められない。
「……行ってらっしゃい……春千夜さん」
「んな顔されたら行けねぇけど」
それをぐっと飲み込んで笑顔で送り出したつもりだったのだけど
春千夜さんには私の心の奥底が分かってしまうのか、少し困った顔をして私の頬を撫でる。
その手が優しくて、行かないでと思う私の我儘な心が増幅してしまいそうになる。
「お前、ほんと可愛いな」
「えっ……?!い、今のどこにそんな要素が……!?」
「んー?常に?手ぇ出すの我慢してんだけど」
「は、春千夜さんっ……!」
春千夜さんのこの言葉を真に受けたらいけない、勘違いしてはいけないと頭ではきちんと理解しているのに
心が馬鹿正直に受け取ってしまうせいで、顔も指も耳も何もかもが熱くて茹でられたタコのようになっていると鏡を見なくても分かるほどに熱い。
顔が近いのも原因だ。
かっこよくて仕方無いのを彼は分かっているのだろうか。
目を合わせるのも必死なのに、彼は私が目を逸らすのを許さないように
その綺麗な目で私の目を見つめる。
「あー、いい事考えた。お前も来い、A」
「え?」
楽しそうな春千夜さんに拒否権などない。
私は手を引かれるまま、春千夜さんの車に乗せられて立派な、それは立派なビルに連れていかれた。
こんな普通の格好をした私が入るのはすごく場違い感があって、中々足が進まない。
「ここまで来たらお前、俺から逃げられねぇな」
「春、千夜さん……?」
「まぁ、逃げても地の果てまででも追いかけて閉じ込めてやるけどな」
「あっ、ちょっ、と」
そう言うと、私を引き寄せて不敵に笑う春千夜さん。
嬉しいに決まってる、離れないと、そう言われているようなものだから。
だけど、どんな気持ちで?
何となく、私と春千夜さんの関係の認識をお互いが違う認識をしているように思えてしまうのは何故なのだろうか。
「は、春千夜さん……?」
「ん?」
「春千夜さんにとって、私は何ですか?」
そう言った瞬間に不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いてしまった春千夜さん。
「三途さん…!お疲れ様で…」
「うっせぇ邪魔すんな、脳天ぶち抜くぞ」
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!? - もむさん、神ですか?!!! 作品全部面白いんですけど?! (4月24日 18時) (レス) @page7 id: 37f7d05f89 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - 朱夏さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!! (1月16日 22時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
朱夏 - この作品本当大大大大好きです!!更新頑張ってください‼️応援してます! (1月14日 19時) (レス) @page1 id: 4ac169a836 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もむ | 作成日時:2024年1月13日 21時