57 ページ7
拓朗side
講義を終えて家路につくも、どうも頭痛がして関節に違和感を覚えた。
これはきっと熱が出ているな…。この前ゼミの中に風邪を引いた奴がいたから、きっとそいつから移ってしまったんだ。
今日はAさんの家に行く予定だったけどこれでは無理だ。
自宅に着いて熱を測ると案の定高めの熱があった。
喉も痛いしダルいし、しんどい。
“体調崩した”とだけ彼女にメッセージを送りソファに横になって目を伏せる。
…Aさん来てくんねぇかな。と頭の隅で思いながらうとうとしていた。
するとピンポン、とインターホンが鳴る。
Aさんか?と一瞬考えたが、連絡してから然程時間が経っていないし、彼女は合鍵を持っているからインターホンを鳴らすことはない。
宅配かな…と、渋々体を起こしてドアを開けた。
そこにいたのは、言わば俺の元彼女。
「梨沙子…なんでここにおんの。」
にこっと微笑んで強引に玄関に入ってきた。
「ちょっと久しぶりに拓朗とお話ししたくて来ちゃった。でもごめんね、具合悪そうだね。お粥でも作ろうか?」
「いや、大丈夫だから。帰って、移したら悪い…」
「いいからいいから」
ぐいぐいと来る梨沙子を止めようとするも、体がふらついて梨沙子に支えられてしまった。
「ちょっ、ほら、全然大丈夫じゃないじゃない!早く横になって!」
情けないけど、今は強引な梨沙子を追い払う力はない。
変わってないな。女の子らしいのは見掛け倒しで、負けず嫌いで融通のきかない、こうと思ったらそれに向かって突っ走るところ。
今はマジで、何を言っても何をやっても梨沙子には敵わない。無理だ。
弱々しく横になって携帯を見ると、“今お宅に伺います”というAさんからのメッセージが来ていた。
まずい。これじゃAさんと梨沙子が鉢合わせる。
「拓朗、お粥できたよ。食べる?」
「ありがとう。でも悪いけど帰って。今…げほっ」
喉が腫れていて上手いこと話せない。
「もう、拓朗大丈夫?」
彼女に背中をさすられていると、ドアが開いた。
「失礼します。」
聞き慣れた声でそこに来たのは、Aさん。
…あぁ、しまった。
現れた彼女はまさに「氷の女王」だった。
今まで見たことのないくらいの無表情さと声の低さ。
みたらわかる。相当怒っている。
もう一度梨沙子に「帰って」と伝えたけど、Aさんは「いいですよ」と、帰さなくてもいいと言う。
最後まで氷の女王は表情で梨沙子を圧倒していた。
590人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なぁ(プロフ) - 咲良さん» そう言って頂けると嬉しいです。ありがとうございます、楽しみにしています! (2019年2月19日 21時) (レス) id: 14a8b3f8b0 (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - なぁさん» いえ、とても素敵なテーマです、是非考えさせて下さい。せっかくだし川上さんオンリーからみんな目線も考えてみたいので、短編集などで登場させたいと思います!本当にありがたいお話です! (2019年2月19日 21時) (レス) id: e819abafbc (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - よくよく考えずとも、お返事頂けた嬉しさで調子に乗っておりました…。いつかの機会に、気が向いたら程度に思ってください。すみませんでした…! (2019年2月19日 17時) (レス) id: 14a8b3f8b0 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - 咲良さん» ご検討有難うございます!こちらこそ、図々しくすみません。むしろ、別作品なんて良いのでしょうか??泣いて喜ぶんですが…(;・∀・) (2019年2月19日 13時) (レス) id: 14a8b3f8b0 (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - なぁさん» ごめんなさい、前言撤回します。いただいたテーマ、私の文章力では1話にとどめられそうにありません。また別の作品として描かせていただくことは可能ですか? (2019年2月19日 0時) (レス) id: e819abafbc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲良 | 作成日時:2018年11月24日 20時