clever and smart 2

番外編 strong girl ページ29

山本side

ある日、オフィスに足を運ぶと、Aちゃんが珍しくソファーで胎児のようなポーズでうとうとしていて、その隣に川上さんが座ってパソコンをカタカタと鳴らしている。

「お疲れ山本。」
「お疲れっす。Aちゃん疲れてるんですか？」
「なんかねー、昨日の夜中舞子さんの家に虫が出たからわざわざ退治しに行ってあげたらしいよ。だから眠いって。」
「たくましい」
「ね。」

自分もカバンを下ろして、カバンからパソコンを取り出した。

そういえば、と思い口を開く。

「Aちゃんて意外と剛腕ですよね。」
「そうなん？」
「この前、書籍類の荷物届いて、その箱結構な重量だったんですけど『よいしょっ！』とか言って軽々持ち上げてました。」

川上さんはその姿を想像したのかクスクス笑う。

「このひょろひょろの体からは想像もつかんな。」
「ほんとですね〜」

その時「それ重いから俺持つよ！」と声をかけたが「え？全然問題ありませんよ」とけろっとした顔で言われた。

「Aさんて基本的に男前だよね。」
「頼もしいというか、安心感ありますね。」
「なんか、逆に俺のこと守ってくれそうじゃない？」

川上さんは冗談ぽく笑いながら言う。

「確かに。」

心霊にも虫にも強く、力持ちで男勝り…、これはもう用心棒か何かかな？と思うほどのポテンシャル。

「…ま、何が何でも俺が守るけど。」

と、最後に小さく川上さんは呟く。

やだ、ときめいた。男の俺でも、川上さんのこういうふとした瞬間はかっこいいと思う。

すると「ふふっ」と笑い声がして目をやると、Aちゃんが目を覚ましていたのか、顔を手で覆い可笑しそうに笑っていた。

「…全部聞こえてるんですよさっきから」
「狸寝入りかよ」

川上さんは聞かれていたことに照れたのか、彼女の頭をぽんとしながら笑う。

「…あたしも守りますよ、川上さんのこと。」

そう言い合って2人は柔らかく微笑んでいた。

…なんだこれ、和む。じゃなくて待って、目の前でいちゃこかないでくれよ。

「ていうか2人とも、もはやあたしのことゴリラか何かと思ってるような発言が目立ちましたが。」

と彼女は起き上がりながら言うので、俺も川上さんも「ん？そんなことないよ？」みたいな顔でしらばっくれた。

ごめん、確かにちょっとゴリラは頭をよぎったわ。

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