46 ページ46
伊沢side
「何してんの俺…」
俺は後戻りができなくなることを覚悟で彼女に「好き」と伝えてキスをした。
彼女が困るのも傷つくのもわかっていたけど止められなかった。
1人ソファに座りうなだれた。
窓から見える空は先程まで青空だったと言うのに、雲行きが怪しくなってきた。
…うん、今更後悔しても遅い。覚悟してたんだから、と自分に言い聞かせた。
どれくらい時間が経ったかわからないが、ガチャ、とオフィスに誰かが入ってくる音がして、顔を上げて笑顔を作る。
今はあまり人に会いたくはないんだけど。
「お疲れ様です。」
低い声で挨拶をする奴を見て、よりによってお前かよ。と言いたくなる。
「お疲れ川上。」
「…何かありましたか？」
川上は俺の顔を見るなりそう言った。
「何もねぇよ…と言いたいところだけど…」
川上もAちゃんも、ふくらもか。頭が良いだけあって察しも良くて、特にこの3人は人を良く観察する癖がある。
先程の件でもう嘘をつく元気もなく、自分が不甲斐なくて自嘲する笑いを溢した。
「ごめん川上。」
「なんの謝罪ですか。」
「Aちゃんとお前が特別な仲だって知りながら、キスしちゃったわ…」
川上は表情一つ変えずに俺の目を見据えた。
「俺に謝られても…。」
いつものトーンで怒っているようでも悲しんでいるようでもない。
「むしろ俺たちの口からちゃんと事実を伝える前に悟らせてしまってこちらこそ申し訳ないです。」
付き合っていると言わなかったのは色々なことに気を遣ってのことだと考えられるからそれは全然気にしていないけど…、感情が見えなくて怖いわ。
川上はずっといつもの表情で淡々と俺に話し続けた。
「それで彼女はどうしたんですか。」
「…うん、困ってたし怒ったかもね。」
「まぁ、Aさんが傷ついたり悲しんだりしたと思うなら、ちゃんと話し合って仲直りしてください。」
川上の声はいつもより余計に抑揚がなかった。
あぁわかった、コイツ…多分相当怒ってるわ。
「じゃあ俺帰ります。忘れ物とりにきただけなんで。」
川上は本棚から自分のものを取り出して部屋を後にした。
川上が怒ってるの初めて見た。あいつあんな怒り方するの？声荒げたり顔に出される方がいいわ。
でもヤツがキレたことで逆に頭が冴えた。
自分が何をすべきか、人とどう向き合うか、今はそれを考えるべきだ。
こうなることはわかってた。Aちゃんの言う通り俺はバカだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 409人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サイゼの店長 - アチス慶應出てきてワロタ (2019年12月12日 21時) (
レス) id: 5cb23e661f (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - marikaさん» ありがとうございます！皆様の応援のおかげです。やはり50話でおさまらなかったのでまた新しく続けます。これからもよろしくお願いします！ (2018年11月15日 6時) (レス) id: e819abafbc (このIDを非表示/違反報告)
marika(プロフ) - 赤星おめでとうございます！ (2018年11月14日 23時) (レス) id: 8a3ac12b6a (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - かたつむりんさん» ありがとうございます！そう言っていただけると頑張れます！助言もありがたいです。とりあえず、お話の完結に向けて進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2018年10月27日 0時) (レス) id: e819abafbc (このIDを非表示/違反報告)
かたつむりん(プロフ) - 咲良さん» 読みますよ！生まれ変わっても読みます！私はいっぱい出てきた方がQKの中にいるって錯覚できるので好きです。無理にあと10話で収めようとか考えずにのびのび書くのがいいと思いますすよ！(何様って感じですが) (2018年10月26日 20時) (レス) id: f9fd282caa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲良 | 作成日時：2018年10月4日 0時
