heartache 2

番外編 6-1 ページ49

あたしたちはお互い、ヤキモチというものを妬かない。

いや、妬くような出来事にまだ直面してないというほうが正しい…のかな…？

昔は遥輝くんに女性ファンがめちゃめちゃ多いことにびびっていたけど、それはもう仕方がないことなので今は気にしていない。

そしてあたしも別にモテないので遥輝くんが嫉妬する機会はない！！！(←自分で言っていて辛い)

ある日、デイゲームの試合が終わったらご飯に行く約束をしていた。

2人で車に乗り込む。

「今日も勝ってよかったね〜。」
「せやなー、これで5連勝やわ。」
「いい感じじゃん。」

今日の試合の話のあと、遥輝くんが珍しい話をし始めた。

「そういえば最近どの球場行ってもいるファンがおんねん。」
「何それ、すごいね。」
「福岡のホテルにもいたし、鎌ヶ谷にも来てたし、東京のホテルにもおんねん。その人“みなみさん”ゆうんやけどめっちゃおもろいねん。」
「…へぇ、そうなんだ。」

“みなみさん”って女の人ですよね…。

遥輝くんはその人について楽しそうに話す。

あたしは平静を装い、遥輝くんの話に耳を傾けた。

…あれ、なんかモヤッとする。もしかして、あたし今…

少し、妬いてる？

しばらくして、目的地の近くの駐車場で車を降りた。

なんか色々考えながら遥輝くんのうしろをちょこちょこ歩く。

いつもは隣を歩いて、どちらからともなく手を握るんだけど…くそ、何かもやもやした気持ちが遥輝くんとあたしの妨げになる！

そう思っている間に、追っていたはずの遥輝くんの背中が2人の壁で見えなくなった。

え？と思い顔を上げると、若い男の人があたしのことを見ていた。

「お姉さん、ひとり？」
「…え、いや」

そんなに遥輝くんと距離が開いていなかったのによくもまぁ割り込んできてくれたなこいつら。

「超かわいくね？」
「俺たちと飲みに行かね？」

ナンパってやつですね！やべ！この歳になっても対処法知らね！

どうしよう、遥輝くんとはぐれちゃう。

完全にきょどってると彼らは面白そうに「困ってる、かわい」なんて言って、あたしの手を掴んできた。

「や、放して…！」

かろうじてあたしが発した言葉はもろ拒絶の言葉。

それと同時にまた違う手があたしを掴んだ。

「放してください。」

この手は！

ぱっと顔を上げた。

「遥輝くん！」

顔怖いです遥輝くん…。

突然別の男の登場にナンパ男も戸惑う。

「俺の彼女なんで。じゃ。」

と、あたしの手をぐいっと引っ張り強引に歩き出した。

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