heartache 2

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時は流れ、CSが始まった。

リーグ優勝は惜しくもソフトバンクに持ってかれてしまったけど、これから日本一に向けての試合が始まる。

リーグ2位で迎えたCSはファーストステージを西武と対戦。

一勝一敗で
明日の勝敗にファイナルに進出できるかがかかってる。

「明日妃菜子とドーム行くね！」
『おう。頑張って勝つわ。』

緊張した声の遥輝くん。

何か、あたしうまいこと言えたらいいんだけどなぁ。

女の子の場合相談とか話したらスッキリする子が多いけど遥輝くんはあまり言葉にしないから。

あたしは電話を耳に当てながら、だらしなくあぐらをかいて考える。

…てゆうかお互いなんでも話す約束じゃん？あたしが悩んでたら全部遥輝くんに言うけど、遥輝くんはあんまり言わないよね？

ずるくないか！？

そう思ったあたしは思い切る。

「ねぇ、緊張してるでしょ。」
『そりゃあ、まぁ。』
「そうだよね〜、だって負けたらこれで終わりだもんね〜。」

あたしは軽く言ってみる。

『あっさり言うなぁ。』

遥輝くんは笑ってるけどきっとすごく緊張してるに決まってる。

「でも、終わりたくないでしょ。」

たまにはあたしだって上から目線で言ってみたい…なんてね。

『…当たり前やろ。』

と、少し強気に返事をしたかと思えば、間をおいてちょっと弱気な声をだす。

『…なぁ、A…。』
「ん？」
『…ここで終われないし絶対このあとソフトバンクと戦いたいけど、今俺ちょっと自信ない。』
「…うん。」

いつも弱音を吐かないで、毎日努力して練習を積み重ねる遥輝くん。

そんな彼が弱ってるのを見せると胸がきゅっとなる。

『…勝てなかったらどうしよ。』

小さく呟くような詰まった声にあたしも泣きそうになる。

あぁ、ほんとうはここまでプレッシャーを感じてるんだ。

1番という打席にたって、いろんなファンにめっちゃ期待されて。

そうだよね。心が押しつぶされないわけがないんだ。

「負けてもいいじゃない。」
『…ダメやろ。』
「いいよ。だってあたしが好きな野球は勝つことじゃない。勝ったら嬉しいけど、選手たちが輝いてるのが1番なの。観客はそんな選手たちを応援してるし努力してるのも知ってる。」

あたしが強くいなきゃ。

「お願い。野球を楽しんで。楽しそうにプレーして。…そしたら、きっと明日は勝てるから。」

根拠のない言葉しか言えないけど。

『…やっぱお前のこと好きやわ。明日俺頑張れる。』

遥輝くんの声が、元気になった気がした。

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