大好きな人は。4

165 ページ15

「あのっ、手続きとか大丈夫ですか？

何かお手伝いできることがあれば言ってください！」


西「大丈夫だよ。


速水は今日は休み？」


「はい。

あ、今日。退院後の診察の日で…。」


西「そっか。

経過どうだった？」


「大丈夫です。
もう少し通院しますけど。」


西「よかった。


もう、無理するなよ。」



すれ違った西島さんから、
ふわっと香るだいすきな香りに
胸がぎゅっと締め付けられる。


私は咄嗟に、
西島さんの腕を掴んでいた。


西「速水？」


「え…あ。

あの。


荷物…。持ちます。
やっぱり心配だから、
一緒に行きます。」


西島さんの手から入院の荷物を奪うように取り、
前を歩く。


少し話しただけでドクドクと
音を立てる心臓。


なのに、
みえない壁を張り巡らせたかのように
近づけない距離。


自分から、
その手を離したのに。



西「ここにいるのは、るり？

それとも、速水？」


背後から西島さんの声。


立ち止まる私。


そんなの決まってる。


マネージャーとしてじゃない。


西島さんのことを好きな私が、
ここにいる。



「るり…です。

ごめんなさい…。」



西島さんは私から荷物をもう一度
取り返した。


西「マネージャーじゃないなら、
荷物持ってもらうわけに行かないだろ？」


空いてる方の手で私の腕を掴み、
行くよ？
と歩き出した。

166 side Nissy→←164

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す