大好きな人は。2

59 ページ9

食事会が終わって、
仕事道具を持って西島さんの部屋に向かう。


部屋のインターホンを押すと、
お風呂上がりなのか、
濡れた髪のままの西島さんが、
ドアを開けてくれた。


西「ごめんな、遅い時間に。入って。」


「いえ、大丈夫です。失礼します。」


西「この前撮ったやつの、前に撮ったやつを
来月に公開したくてさ。
まだ、完成前だけど、
ちょっと見て。」


と私にタブレットを渡す。



ワガママ



というファイルを指差す西島さん。


言われるがまま、その映像を見る。


あっと言う間に映像の世界に引き込まれる。
今までのNissyにはない、
切ない悲しいストーリー。
でも、見る側に想像させる余力をも持つ。


見終わった私を見て、西島さんが驚く。


西「速水？…泣いてる…？」


「すみません…。私、これ…。
西島くんは、死んじゃうんですか？

Nissyの魔法で、
少しだけサヨナラの時間が持てたってこと？」


西「まあ。いろんな捉え方をしてもらいたいと思うけど。」


ティッシュを私に手渡して画面を確認する西島さん。


西「あ、向こうも揃ったみたいだ。繋ぐよ？

おーい！」


ス「お疲れーすっ。速水ちゃんも！

お疲れー！」


「お疲れさまです。よろしくお願いします。」


西「じゃ。始めるよ。」


西島さんのとこには、
事前に検討事項がメールで来てたようで、
ひとつひとつ、自分のイメージや考えを説明してく。


私はそれを聞きながら、
端的にPCで文章にまとめていく。


時折意見を求められたりして。


私はこの作業が意外と好きだ。
西島さんの話すことは上手く文章にするのが難しいけど。


西島さんの言葉を一番はじめに聞けるのは、
役得なんだなぁと嬉しく思う。


あーでもない、こーでもないと、
2時間位は話しただろうか。


西「じゃあ、続きは明後日ね。東京で。」


ぷつっと消える画面。

60→←58

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す