扉あければ、 (ページ8)

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昨日ぶりのレストラン

外からみても、週末だからかいつもより混んでいた

いつものようにドアを開け、中に入ると

「いらっしゃいませ」

少し落ち着きのある声が私を包んだ

けどそのなかに、大好きな声はなかった

「あ、Aさんっ」

私たちのことをよく知るバイトの子が来てくれた

「店長ですよね？今お話ししたはって、もう少しで終わると思うんでいつもんとこで待っててください！」

ペコッとしてまた仕事に小走りで戻っていた

店内の奥の方を見ると、あっくんと昨日の女の人が楽しそうに話していた

さっきの子がそんな長くはならなさそうに言ってたから待ってることにした

ちょうど私が座るいつもの場所からあっくんたちが見える

あっくんは私に気づいてないみたい

あっくんたちは、時々笑い合ったり、少し真面目なかおになったり

二人は楽しそう

昨日はあんまりよく見えなかったけど、その女のひとは可愛らしくて

その二人を見てると、なんだか急に心がもやっとした

なんだろ、寂しいというか

彼女でもない私が、他の女の人と話してるだけで嫉妬するなんておかしい

そう自分に言い聞かすけど、到底効くわけない

ただただいつも自分が当たり前のように、隣にいて、話し合って、笑いあってた場所に、知らない誰かがいるっていうのがなんとなく嫌だった

そんなこと思ってても、自分が何かできるはずがない訳で、ただその気持ちをまぎらわそうとお水をやたらと喉に流した

すると、あっくんは何かを取りに来たのかキッチンにきた

「なんや来てたん」

その一言だけ

私の大好きな「いらっしゃいませ」の言葉はなかった

『ごめん、今日はもういいわ』

自分でも何をしてるか分かんなかった

気付けば、家へと向かう帰り道で頬は少し濡れてた

なにやってんだろ

ただあっくんが自分の知らない誰かと仲良さそうにしてて

それだけなのに

恋人でもない私には関係ないのに、なんでこんな心がモヤモヤするんだろ

家に帰って、今日買ったプレゼントを、引き出しの奥にいれることしかできなかった