扉あければ、 (ページ28)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:26,720 hit

◎ ページ28

＿

『へぇ、やっぱ世界って狭いんやなぁ』

地元の人なら分かるような話ばっかしていて、いつのまにか時間が経っていた

『あ、そういえば時間、』

「ほんまや、ごめんどれにする？」

『じゃあ、この緑ので』

今日はとりあえず、小さいときに好きだった緑の金平糖にした

「ありがとうございます」

『いえいえ、こちらこそ』

ほんの数十分前まではただの客と店員だったのに

なぜか安心感と親しさを抱いてしまってて、

何となく店を出るのが名残惜しかった

またこれば良いだけの話なのになぜか寂しくなって、ドアを開けようとしたときだった

『あの、！名前だけでも聞いてええかな、？』

「あ、杉咲Aです、そっちは？」

『濵田！濵田崇裕っていう、！』

「濵田さん、？」

『おんっ、じゃあ』

そういって小さく手を振り、店を出た

久しぶりに星も見れ、濵田さんにも会えて、

今日は運がいいかもしれない

＿

それから濵田さんのお店には月に何度か通うようになり

あの日みたいに普通にタメで話すようにもなって、

濵田さんは少し天然というか、あほというか、

なんてことまで気付いた

そして、いつのまにか私は濵田さんに特別な気持ちを抱き始めた

けど、想いは伝えられない

もしかしたら濵田さんも私を好きなのかもとか自惚れたり、

断られたりしたら、今までみたいに話せなくなって嫌だし、

結局、想いは隠したまま

そして今日もいつものように、喋って帰ろうとしたときだった

『あ、Aちゃん、！』

「、？」

『明後日とか暇やったりする？』

初めてのお出かけのお誘い

もちろん私の答えは

「暇、！」

『じゃあさ、明後日１０時に駅で、』

「うん、わかった」

『んなら、また明後日』

ばいばいっといって外へ出たあと、

窓からちっさくガッツポーズをする濵田さんが見えた

特別な関係になるのも時間の問題かも

そんな自惚れは、きれいな夜空とともに私を幸せに包んだ

＿